物理学系 News&Information
非平衡に潜む物理法則を求めて
物理学は、自然界に起きるさまざまな現象の中に法則性を見い出し、それを体系化していく学問です。その対象は、素粒子、原子核という極微のスケールから始まり、多彩な構造や性質をもつ原子レベルの物理、さらに我々を取り巻く宇宙まで、あらゆるものを対象にしています。物理学系の研究室では、そのほとんどすべての領域をカバーし、世界をリードする最先端の研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、非平衡に潜む物理法則を探求する、竹内研究室です。
非平衡系はどこまで統一的理解ができるのか?非平衡の統計力学は存在するのか?このようなbig questionsを胸に、液晶などのソフトマターやカオス、生命現象などを題材にして、非平衡に潜む物理法則を実験的に探求しています。優れた実験系は、観察対象の理解を深めるだけでなく、時として異分野のテーマとも繋がりをもつ、自然現象の不思議な一面を見せてくれます。そのような実験をデザインし、観察、解析、議論を通じて、未開の地が広がる非平衡系の理解を進めています。
私たちが目にできる大きさの物質や現象のうち、熱平衡状態にあるもの、また平衡近傍にあるものに関しては、人類は深い理解に到達することができました。特に、対象を選ばず適用できる熱力学と統計力学の枠組みは、平衡系には極めて強い普遍性があることを教えてくれます。一方で、ふと周りを見回すと、味噌汁でも目にする対流、雲や風紋のパターン形成、生体分子の協同現象から動物の群れまで、私たちは多くの非平衡現象に囲まれていることに気が付きます。そうした非平衡系に、普遍的な物理法則や概念はどのくらいあるのでしょうか?
様々なマクロ物理現象の中でも、強い普遍性が見られるのが、臨界現象に代表されるスケール不変な状況です。例えば当研究室は、液晶に電圧をかけて乱流状態を実現し、そこで見られる相転移や界面成長過程を測定して、様々な非平衡普遍法則の実験検証や新たな統計法則の発見に主導的な役割を果たしています。また、大腸菌など生物集団の統計的性質を探る実験や、大自由度カオスの実験研究を目指した試みも始めています。このような多彩なアプローチと、統計力学や数理模型の知識などを組み合わせた定量的な研究が、竹内研究室の強みです。
准教授 竹内一将
E-mail : kat@kaztake.org
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。