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コヒーレントな光と相互作用で拓く新しい分子物理学
物理学は、自然界に起きるさまざまな現象の中に法則性を見い出し、それを体系化していく学問です。その対象は、素粒子、原子核という極微のスケールから始まり、多彩な構造や性質をもつ原子レベルの物理、さらに我々を取り巻く宇宙まで、あらゆるものを対象にしています。物理学系の研究室では、そのほとんどすべての領域をカバーし、世界をリードする最先端の研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、コヒーレントな光と相互作用で新しい分子物理学を拓く、金森研究室です。
金森研ではレーザー光やマイクロ波のように、波長と位相のそろったコヒーレントな電磁波光源を用いて、原子・分子の巨視的な単一量子状態を生成することによって、新しい機能を発現させたり、今まで見逃されていた情報を引き出すことを目指しています。
また、そこで開発された新しい原子・分子の観測手段を用いて、分子の構造や反応ダイナミクスを追跡する化学的な研究をおこない、さらにその分光学手成果を地球大気環境科学から星間分子の天文学までに応用するという幅広い研究を行っています。
3軸で交差するレーザー光とその交差点でトラップされたRb原子集団 モノクロCCDカメラ写真
金森研では2005年のノーベル物理学賞の受賞対象となった「光コム」と呼ばれるレーザーシステムを用いて、半導体レーザー光の周波数を1 Hzの精度で位相安定化するという驚異的な性能を実現しています。この高い周波数分解能を使えば、今までは測定精度の誤差に隠されていた物理学の基本的現象、例えば
というような課題について、テーブルトップの分子スペクトル測定実験で検証することが可能になると考えています。ただし、このような優れた光源の利点を実際に活かすためには、観測対象となる気相の分子を冷却し空間に捕捉する必要があります。我々はこれを「冷たい分子」と呼んでおり、現在mK(ミリケルビン)の低温状態を目指して様々な試みをしています。
また、星間空間として存在が期待されるアセチレン分子が長く伸びたポリアセチレン分子をALMA望遠鏡で観測するための実験室分光を計画しています。
研究室には
が集まっています。物理学のみならず、基本的な数学や化学の知識を実践的に身に着けながら、幅広くScienceを語り、自然と付き合える人になってもらいたいと願っています。
そのために、卒研生および他大学から新たに研究室に加わる人には、2ヵ月間の「導入実験研修」というメニューを用意しています。本格的な卒論や修論の実験を開始する前に、研究室の主要な実験装置を通して、必要となる基本的知識と技術を修得してから、自分が面白がれる研究テーマを選んでもらうようにしています。
金森研では、各個人が自分の研究を自由に精力的に行っています。研究は、基本的に1人1テーマなので、自分のペースで行えます。もちろん、うまく行かず途方に暮れてしまうような時は、心優しい先輩方が丁寧に教えて(悩んで)くださいますし、金森先生は的確なブレイクスルーを与えてくださいます。レーザー、分子、天文などに興味のある人なら充実した研究室生活を送れるでしょう。是非、一度研究室の方へ見学に来てください。
准教授 金森英人
E-mail : kanamori@phys.titech.ac.jp
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。