材料系 News

坂井・宮内研究室 ―研究室紹介 #29―

地球資源と太陽光を有効利用し、持続可能な社会を実現

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2016.12.06

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、低炭素・資源循環型社会に関連した多くの問題を材料化学から解決することを目指す、坂井・宮内研究室です。

教授 坂井悦郎 教授 宮内雅浩 助教 山口晃

無機材料分野
材料コース・エネルギーコース
研究室:大岡山キャンパス・南7号館818号室 / 819号室
教授 坂井悦郎 教授 宮内雅浩 助教 山口晃

研究分野 CO2削減 / 資源循環 / 高耐久・長寿命材料 / 光エネルギー変換
キーワード 廃棄物利用、建設材料、低炭素、高耐久性材料、光触媒、人工光合成、太陽電池
Webサイト 坂井・宮内研究室別窓
坂井悦郎 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
宮内雅浩 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
山口晃 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

研究室概要

坂井・宮内研究室は低炭素・資源循環型社会に関連した多くの問題を材料化学から解決することを目標としています。坂井悦郎教授は微粒子工学、資源循環・セメント化学に立脚した二酸化炭素削減や廃棄物のリサイクルシステムの開発に取り組んでいます。宮内雅浩教授と山口晃助教は光電気化学やナノ粒子合成をベースとして環境浄化材料、人工光合成、太陽光発電素子の開発をおこなっています。いずれもナノ~マイクロスケールの材料を設計し、反応化学、微粒子工学、半導体光化学を駆使して持続可能な社会や低炭素化社会の実現を目指しています。

研究テーマ

資源循環・セメント化学

社会資本整備は、社会の安全・安心のために重要であり、そのためにセメント・コンクリートは必要不可欠な材料です。その際、「作っては壊す」社会から「いいものを作って、きちんと手入れをして、長く使う」社会とすることが今後必要とされ、政府のプロジェクトも推進されています。また、低炭素型の社会資本構築システムが要求されています。さらに、建設分野では大量な材料を利用することができるため産業廃棄物などを有効に利用し循環型社会システムの構築に役立つことが期待されています。 この分野として本研究室では次のような研究を実施しています。

  • 廃棄物を利用した低炭素型セメント・コンクリートシステムの開発
  • 廃棄物を原・燃料に利用し、かつCO2 排出量を削減した低炭素型汎用セメントの開発
  • ナノ粒子や特殊な構造の高分子系分散剤の利用による超高強度・高耐久セメント系材料の開発
  • ひび割れ抵抗性や塩害に対する抵抗性を有するナノスケール構造制御によるセメント系補修材料や更新材料の開発
  • 層状のカルシウムアルミネート系水和物(例えばCa3Al2O6-CaSO4-H2O:AFm相)による、六価クロムや塩化物あるいはヨウ化物イオンなど有害イオンや放射性廃棄物の固定化
  • 水熱反応を利用した廃棄物利用建材の開発

ナノ粒子と特殊高分子系分散剤の利用による超高強度セメント系材料の使用例(東工大本館前のデッキ、超高層建築物や羽田空港滑走路などに実用されています)
ナノ粒子と特殊高分子系分散剤の利用による超高強度セメント系材料の使用例(東工大本館前のデッキ、超高層建築物や羽田空港滑走路などに実用されています)

層状化合物の層間にイオン交換で有害イオンを固定
層状化合物の層間にイオン交換で有害イオンを固定

ECM(エネルギー・CO2ミニマム)セメント・コンクリートシステムの開発に環境大臣賞

ECM(エネルギー・CO2ミニマム)セメント・コンクリートシステムの開発に環境大臣賞

低炭素型社会資本整備に関連したECM(エネルギー・CO2ミニマム)セメント・コンクリートシステムの開発では、平成27年度地球温暖化防止活動環境大臣賞(技術開発・製品化部門)を受賞しています。また、古いセメント・コンクリート構造物に関連して映画「バケモノの子」にも協力しました。

光エネルギー変換材料

坂井・宮内研究室では光触媒と太陽電池の研究もおこなっています。光触媒は光エネルギーによって様々な化学反応を起こすことができます。例えば、有害物質や病原菌を殺菌する環境浄化材料として使えますし、水や二酸化炭素を化学的に変換し、エネルギーとして有用な水素やアルコールを製造することもできます。また、当研究室では低コストで製造できる量子ドット型太型太陽電池の開発など、ナノ粒子を塗布するだけで簡単に製造可能な光エネルギー変換技術を開発しています。実用化を意識して特に以下のことを念頭にして研究に励んでいます。

  1. 1.丈夫で長持ち(無機材料の特徴)
  2. 2.安価で大面積(溶液プロセスの特徴)
  3. 3.安全・安心(ユビキタス元素)

近年では、室内照明で機能する光触媒を当研究室で開発し、病院や空港など、様々な施設で使われようとしています。

ナノ粒子の精密な制御と薄膜化

ナノ粒子の精密な制御と薄膜化

人工光合成デバイス(植物の葉を半導体薄膜で実現)

人工光合成デバイス(植物の葉を半導体薄膜で実現)

社会のつながりと卒業生の進路

研究開発の成果を社会に還元させるためには、社会ニーズの分析や研究成果の適正な評価が不可欠です。当研究室は社会ニーズへの貢献のため、企業との共同研究やNEDOやJSTといった大型国家プロジェクトに積極的に参加しています。その結果、研究室に所属している学部・大学院生の中には、産業に貢献する重要な成果を出す者もおり、大きなモチベーションとなっています。また、学生たちは積極的に学会発表や論文投稿を行い、第一線の研究者との議論を深めることで次の研究への糧としていまする。卒業後の就職先も建設、化学、電機、機械、情報通信、自動車、エネルギー、官公庁など多岐にわたります。

学生の学会発表、国際交流、受賞の様子

学生の学会発表、国際交流、受賞の様子

おわりに

我々人類は太陽光の恩恵を受けながら地球上の様々な物質を活用しながら生活をおくっています。化石燃料は元をたどれば太陽光エネルギーであり、この無尽蔵なエネルギーを有効活用すべきことは言うまでもありません。一方、我々は住宅や構造物無くしては健康で衛生的な生活が成り立たず、こうした構造物の長寿命化や資源リサイクルも重要課題です。坂井・宮内研究室では材料化学的な視点でこうした課題に取り組んでおり、将来の環境・エネルギー技術分野のグローバルリーダーが育つことを願っています。

坂井・宮内研究室

代表的な研究成果

  1. 1.J.Plank, E. Sakai et al. Cement & Concrete Res. 78, 81, 2015
  2. 2.坂井悦郎、国土強靭化に資するセメント系材料の開発、セラミックス、50, 910, 2015
  3. 3.Yin, Miyauchi et al. ACS Nano 9, 2111, 2015.
  4. 4.Miyauchi et al. J Am. Chem. Soc. 135, 10064, 2013.

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 坂井悦郎
E-mail : esakai@ceram.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3368

教授 宮内雅浩
E-mail : mmiyauchi@ceram.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2527

※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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