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陽子と中性子のクォーク、反クォーク、グルーオン構造を探る
物理学は、自然界に起きるさまざまな現象の中に法則性を見い出し、それを体系化していく学問です。その対象は、素粒子、原子核という極微のスケールから始まり、多彩な構造や性質をもつ原子レベルの物理、さらに我々を取り巻く宇宙まで、あらゆるものを対象にしています。物理学系の研究室では、そのほとんどすべての領域をカバーし、世界をリードする最先端の研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、陽子と中性子のクォーク、反クォーク、グルーオン構造を探る、柴田研究室です。
研究の分野は、素粒子物理学です。
宇宙創生から1ミリ秒もたたないうちにクォークから陽子が構成され、それ以来130億年以上がたっています。しかし近年では粒子加速器からの高エネルギー粒子を用いて、陽子の中のクォークの振る舞いを『見る』ことができるようになってきました。
宇宙創生の直後には、物質と反物質は同じ量だけあったと考えられるが、まだ解明されていない非対称性によって、現在では物質優勢の世界になっています。しかし、現在の世界の中には、つまり星や人の体を構成している陽子の中には、反クォークが存在しています。反クォークは陽子の運動量の一部を担っているだけでなく、陽子のスピンの一部を担っている可能性があります。反クォークの存在を特定する実験的手法があるので、それを用いて研究をしています。
素粒子物理は、宇宙の本質の解明を目指す物理の基本的な分野で、魅力ある未踏の研究テーマがたくさんあります。
クォークとクォークの間の力を媒介するのがグルーオンで、この力は「強い力」と呼ばれ、電磁気的な力よりもずっと短い距離で働きます。その理論は、量子色力学(QCD)と呼ばれています。発展がめざましい量子色力学を、様々な方法の実験と理論的解釈とによって研究しています。
物質の質量はそれを構成する原子の質量によるものですが、原子の質量のほとんどは原子の中の原子核の質量です。更に原子核の質量は陽子と中性子の質量によるものだが、陽子と中性子を構成するクォークは本来は質量がゼロの粒子です。クォークはヒッグス場との相互作用によっては数MeVの質量を得るだけなので、質量の残りの98%は「強い力」、つまりグルーオンの場に起因すると考えられます。このことが、質量の起源として強い力を研究する動機になっています。
柴田研究室では、具体的には次のような研究をしています。
1.は素粒子実験としては少人数の実験で、日・米の大学院生を主とした十数人が中心的な活躍をしています。したがって、大学院在学中に、測定器の設計・製作、データを取るソフトウェアの開発、データの物理解析、理論解析の全部をそれぞれの学生が行います。
特に「陽子のスピンの起源の謎」を解明する研究の先頭に柴田研究室は立っています。陽子のスピンは1/2だが、それがクォークやグルーオンのスピンから宇宙初期にどのように構成されたか、は「陽子のスピンの起源の謎」と呼ばれています。
データ解析の拠点は日本にあり、東工大にいて世界中の実験データを解析することができます。
理論的研究に主力をおいている大学院生もいます。
更に詳しくは、研究室のホームページを見てください。
柴田研究室は、素粒子物理が中心だが、扱っている範囲は広く、それぞれが自分の興味に従って研究テーマを選んでいる。用いている粒子加速器は、日本国内、アメリカ、ヨーロッパにわたっている。
国際共同研究を多く行なっているので、外国人の大学院生や研究者の来訪が頻繁にあり、逆に東工大の大学院生が外国へ出かける機会も多くある。そのような際に、研究室の新しいメンバーなどとの親睦をはかっている。
教授 柴田利明
E-mail : shibata@nucl.phys.titech.ac.jp
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。