物理学系 News&Information
走査プローブ顕微鏡を用いた量子ナノデバイス・バイオ界面の研究
物理学は、自然界に起きるさまざまな現象の中に法則性を見い出し、それを体系化していく学問です。その対象は、素粒子、原子核という極微のスケールから始まり、多彩な構造や性質をもつ原子レベルの物理、さらに我々を取り巻く宇宙まで、あらゆるものを対象にしています。物理学系の研究室では、そのほとんどすべての領域をカバーし、世界をリードする最先端の研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、走査プローブ顕微鏡を用いた量子ナノデバイス・バイオ界面の研究をする、橋詰研究室です。
走査トンネル顕微鏡(STM)や走査プローブ顕微鏡(SPM)とそれらを応用したSP極微細加工法を用いて高分子ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、電極-有機薄膜界面、生体・生体材料界面などの計測評価を行い、ナノ構造・ナノスケールデバイスの基礎研究を行う。
走査トンネル顕微鏡(scanning tunneling microscopy=STM)は、非常に鋭く尖らせた探針を試料表面から1 nm程の距離に保持して、試料表面の凹凸を原子レベルの空間分解能(原子分解能)で観察する顕微鏡で、半導体や金属の表面原子を個々に観察できる特徴により、最近、特に普及している顕微鏡です。また、トンネル分光による原子スケールでの電子状態解析も可能です。さらに、様々な物理媒体をつかって試料表面の特性をマッピングする走査プローブ顕微鏡(SPM)も派生して、ナノテクノロジー研究の基礎になっています。一方で、有機材料を用いた、安価で、大面積で、柔軟で、軽く、薄い環境にやさしい、高機能なデバイスによるスマートな住環境が期待されています。
当研究室では、このSPMとSPMをツールとして用いて、有機分子材料を利用したナノ有機エレクトロニクスの構築を目指した研究を行っています。具体的には、SPMの探針先端から放射される電流により30 nm程度の微細な電極まで加工できるSP微細加工法を開発して、このSP微細加工法によりサファイア基板上に極微細電極を作製して、有機薄膜、導電性高分子、高分子ナノワイヤーなどの導電率を測定し、さらに、FET(電界効果トランジスタ)としての特性を評価しています。カーボンナノチューブ(CNT)やシリコンナノワイヤーも含めた、各種ナノワイヤーをうまく電極に配列させたり、それらのナノワイヤーと電極との接点が良好になるような界面を設計して、理論的に予測したりデバイス特性を実験で検証したりする研究を始めたところです。また、この界面制御手法を、産業界で使われ始めている、有機薄膜トランジスタや有機発光薄膜へ展開して実用化への貢献をしようとしています。
さらに、最近、物理バイオ計測に研究を進展中で、生体・生体材料界面の計測手法も開発しています。
特任教授 橋詰富博
E-mail : tomihiro.hashizume.qb@hitachi.com
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。