物理学系 News&Information
レーザーで真空中にナノ粒子を浮かべて物性を探る
物理学は、自然界に起きるさまざまな現象の中に法則性を見い出し、それを体系化していく学問です。その対象は、素粒子、原子核という極微のスケールから始まり、多彩な構造や性質をもつ原子レベルの物理、さらに我々を取り巻く宇宙まで、あらゆるものを対象にしています。物理学系の研究室では、そのほとんどすべての領域をカバーし、世界をリードする最先端の研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、レーザーで真空中にナノ粒子を浮かべて物性を探究する、相川研究室です。
当研究室では、真空中に浮かべたナノサイズの固体試料(ナノ粒子)の内部における物性を探究していきます。特に、試料の温度を希釈冷凍機でも到達できない極低温領域まで冷却し、新たな現象を見出すこと、またこれを理解することを目標としています。
これまでの多くの物性実験は、サイズの大きなバルクの試料を、希釈冷凍機の下限温度である絶対零度10mK程度より高い温度において観測する形で行われてきました。これに対し、当研究室では、原子・分子物理学および量子光学で培われてきた技術に基づき、ナノサイズの試料を真空中に浮かべて熱的・物理的接触を断った上で、その内部の物性を探る、という新しい試みに取り組みます。このようなアプローチにより、従来の手法では探究の難しいナノ粒子の物性を、10mK以下という極低温領域で探っていくことが可能となると期待されます。
実験の具体的な内容は、ナノ粒子をレーザー光中に捕捉し、その特性を別のレーザーによって分光的に測定していく形になります。新しいタイプの実験手法であるため、捕捉されたナノ粒子の運動を抑える方法から、その内部の温度を測定する方法、さらに内部の温度を冷却する方法など、全ての過程を一から開発していきます。
准教授 相川清隆
E-mail : aikawa@phys.titech.ac.jp
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。