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渡邉学助教が2023年日本鉄鋼協会 研究奨励賞を受賞

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2023.03.15

東京工業大学 物質理工学院 材料系の渡邉学助教(エネルギーコース 主担当)が「2023年日本鉄鋼協会 研究奨励賞」を受賞しました。
日本鉄鋼協会によると、研究奨励賞は、「鉄鋼及びその関連領域において優れた研究実績を挙げている若手研究・技術者」に贈呈されるものです。表彰式は、2023年3月8日(水)に第185回春季講演大会(於:東京大学 駒場キャンパス)において行われました。

受賞テーマと理由

日本鉄鋼協会が発表した受賞テーマと理由は次の通りです。

  • 溶融規則―不規則変態合金における新たな金属溶液論の展開

受賞者は、高温金属融体の熱力学、熱物性およびそれらの測定手法に関する研究において、先進的な研究を行ってきた。鉄鋼材料の乾式精錬プロセスの最適化の為には、金属融体の密度、熱容量、熱伝導率などの熱物性値が必要不可欠となる。これら社会的ニーズに対し、受賞者は、電磁浮遊法と静磁場を組み合わせ不確かさ1.1%という高精度の融体物性測定手法を確立した。この手法により受賞者は、従来理想溶液と同等であると考えられていた溶融Fe-Ni合金において、過剰体積および過剰定圧熱容量の測定に成功した。また、従来の金属溶液論では”融体の過剰体積は過剰エンタルピーとの間に正の相関が生じる”とされてきた。しかし、受賞者は、Fe-Ni合金含めほとんどの規則―不規則変態を生じる合金系の溶融状態では従来溶液論では想定できない負の相関を示すことを発見し、さらに、Pt-X(X=Fe, Co, Ni, Cu)およびPd-X融体の過剰体積は、X成分の3d電子数に比例して小さくなるため、負の相関性は電子状態が支配していることも明らかにした。この負の相関性について、受賞者は溶融金属内の原子間相互作用、原子配置および電子結合を考慮できる過剰ギブズエネルギーを用いて、過剰体積の要因を解釈した新たな金属溶液モデルを提唱している。このように、熱力学および熱物性にとどまらず電子状態を考慮した多角的な材料研究は現在まで行われておらず、受賞者の研究は、今後の金属溶液論の発展へ大きな貢献が期待される。

渡邉学 助教のコメント

渡邉学 助教

渡邉学 助教

このたびは、日本鉄鋼協会研究奨励賞を受賞させていただき、大変光栄に存じます。
研究をご指導・ご協力くださる先生方およびその関係者の皆様に心から感謝申し上げます。
本受賞は、私が学生時代から取り組んでいる研究テーマです。本研究では、従来の溶液論で説明することができない規則―不規則変態を生じる合金系の溶融状態に着目し、過剰熱力学関数と遷移金属の電子状態の相関性に基づいた新たな金属溶液モデルを提唱しました。現在は、さらに研究を進め、溶融金属の電子状態のin-situ測定を行うべく、SPring-8などの外部の研究機関との連携を深めながら日々研究を進めています。
このような栄誉ある賞を頂きましたことを心から感謝するとともに、研究奨励賞の名に恥じぬよう、一層、教育・研究活動に邁進いたします。

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