材料系 News
新しい機能性酸化物の開拓と機能発現機構の解明 ―低次元磁性体から非鉛圧電体まで―
材料系では「金属材料」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、新しい機能性酸化物の開拓と機能発現機構の解明をする、東研究室です。
無機分野
材料コース
研究室:すずかけ台キャンパス・J1棟904号室
教授 東正樹 特任助教 重松圭
研究分野 | 機能性セラミックス / 負の熱膨張 / 量子磁性体 / 非鉛圧電体 |
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キーワード | 機能性酸化物、新物質探索、精密構造解析、固体化学 |
Webサイト |
遷移金属酸化物は磁性、強誘電性、超伝導性などの様々な有用な機能を示します。我々はダイヤモンド合成に使われる高圧合成法や、単結晶基板をテンプレートとした薄膜法などの手段を駆使して、温めると縮む負の熱膨張材料、環境に有害な鉛を排した圧電体、強磁性と強誘電性が共存する材料などの、新しい機能性酸化物を開拓しています。温度や圧力の変化によって 機能が発現する際の、わずかな結晶構造変化を放射光線や中性子線を用いて検知し、機能の発現メカニズムを解明します。こうして得られた情報からさらに新しい材料を設計、合成するというサイクルで研究を展開しています。非常に基礎的な低次元磁性体から、応用をにらんでの非鉛圧電体開発に至るまで、幅広い視点で材料の探索を行っています。
半導体製造装置や光通信などの精密な位置決めが要求される場面では、材料の熱膨張が問題になります。昇温に伴って縮む、「負の熱膨張」を示す材料は、部材の熱膨張を補償するために使われます。我々のグループでは、BiNi0.85Fe0.15O3が既存材料の6倍もの巨大な負の熱膨張を示す材料であることを発見、多数の新聞に報道されました。この発見は、母物質であるBiNiO3(これも我々が見つけた新物質です)の、圧力下の電子状態と結晶構造の変化を調べる研究から生まれました。基礎研究が特許性を持つ材料開発につながる好例です。
電気と運動を変換する圧電材料は、インクジェットプリンター等のアクチュエーターや超音波診断装置等のセンサーとして広く使われ、私たちの生活を支えています。現在主流の材料であるPbZrO3-PbTiO3固溶体(PZT)は環境に有害な鉛を重量にして64%も含んでいるため、代替材料の探索が急務です。PZTの結晶構造に倣い、種々の非鉛圧電材料の設計・開発を行っています。
磁石(磁性)とコンデンサー(強誘電性)の性質を併せ持つ物質は、強磁性強誘電体、又はマルチフェロイクスと呼ばれ、次世代のメモリーやセンサー材料として注目されています。我々のグループでは、BiFeO3のFeをCoで置換することによりスピンの並びが変化し、室温で弱強磁性と強誘電性が共存するマルチフェロイック物質となることを発見しました。電場による磁化反転の実証を目指し、単結晶・薄膜合成の両面から研究を進めています。
当研究室の学生の4年生時の研究テーマは、有機合成、錯体、表面科学など、様々です。上記の研究内容に馴染みが無くても、用語がわからなくても、心配いりません。好奇心のある、元気なあなたを待っています。また、企業との共同研究も盛んで、数名の方が研究室に出入りします。就職活動やその後の社会人生活の貴重な体験談を沢山聞けるはずです。
日本物理学会、応用物理学会、日本化学会、セラミックス協会、粉体粉末冶金、高圧力学会、日本結晶学会など。その他海外の学会、ワークショップ等多数参加。これらの発表において、多くの学生が優秀発表賞等に輝いています。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 東正樹
E-mail : mazuma@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5315
※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。