材料系 News

矢野・松下研究室 ―研究室紹介 #61―

ガラスのダイナミズムとナノ構造体制御の材料科学

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2017.09.20

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、高い機能を持つ材料・素子の創成を目指した研究を行う、矢野・松下研究室です。

教授 矢野哲司 准教授 松下伸広 助教 岸哲生

無機材料分野
材料コース・ライフエンジニアリングコース
研究室:大岡山キャンパス・南7号館712号室 / 713号室
教授 矢野哲司 准教授 松下伸広 助教 岸哲生

研究分野 無機非晶質・ガラス材料 / 無機化合物ナノ構造体 / 光機能・光波素子 / 磁気・バイオ・ケミカルセンシング
キーワード ガラスの科学・工学、イオン交換、液相プロセスによる新規非晶質材料合成、微小光学素子、フェライト、透明導電膜、、バイオセンサ、固体酸化物燃料電池
Webサイト 矢野・松下研究室別窓
矢野哲司 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
松下伸広 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
岸哲生 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

研究室概要

研究室の日常

図1 研究室の日常

ガラスや有機無機ハイブリッド材料、無機化合物ナノ構造体の作製を通して、光-光・エネルギー変換、ケミカルセンシングなどの高い機能を持つ材料・素子の創成を目指した研究を行っています。ガラス・非晶質材料の製造・合成に関する基礎科学・技術の構築、液相合成技術を用いたナノメートルレベルの構造制御法の確立を通して、性能を高め、材料特性を最大限に引き出すことを研究の柱としています。

基礎研究として、ガラスの構造解析、ガラス中のイオンの存在状態、高温ガラス融体の物性などを対象として、高温ラマン散乱や高温X線CTなどを用いた解析手法の開発を進めています。また、放射性廃棄物固化体に向けた新規ガラス組成探索を行っています。応用研究としては、ガラスのナノイオン交換法、インクジェットパターニング、スピンスプレー法や水熱電気化学法などの新規溶液プロセス、レーザー局所加熱によるガラス微小球成形法といった独自技術を開発し、ナノメートルからマイクロメートルサイズの形状・形態制御により、特異な光学・電気・磁気特性を発現する機能性素子を作製しています。

(左)留学生を囲んで (右)ゼミ旅行にて

(左)留学生を囲んで (右)ゼミ旅行にて

研究テーマ

高温ガラス融体の構造・化学反応の解明

(左上)工大祭で一般公開しているガラスの熔融実験 (左下)高温X線CTによる廃棄物固化ガラスの3次元画像解析 (右)高温ラマン散乱分光装置

図2 (左上)工大祭で一般公開しているガラスの熔融実験 (左下)高温X線CTによる廃棄物固化ガラスの3次元画像解析 (右)高温ラマン散乱分光装置

高温で熔融し急冷して作られるガラスは、身の回りのあらゆるところに使われていますが、まだまだ未解明のことが多くあります。

矢野・松下研では、世界唯一の、または世界に数台しかない装置群を駆使して、ガラスの物理・化学を探求しています。その知見を活かして、省エネルギーガラス熔融技術や放射性廃棄物用ガラス固化技術の開発、といった世界のために役立つ材料や技術の研究を進めています。

ガラス中のイオンを自在に動かすイオン交換

ガラス中のイオンは移動させたり、外部のイオンと入れ替えたりすることができます。スマートフォンのタッチパネルに使われているガラスには、このイオン交換によって実現された割れにくいガラスが用いられています。

当研究室では、電界を使ってガラス中のイオンを自在に動かし、もっと割れにくいガラスや、特異な光物性を持つガラスの実現を目指しています。下の図は、微小な針を使ってガラス中のAgを引き出し、微小なサイズの構造を作ったものです。このような構造体は、特異な光の屈折や散乱を起こす新しい光学材料として応用することができます。

ナノイオン交換リソグラフィ(左)によりガラスから引き出したAgの細線(右)

図3 ナノイオン交換リソグラフィ(左)によりガラスから引き出したAgの細線(右)

新しいプロセスによる新規非晶質材料の開発

キャピラリー電気泳動法

図4 キャピラリー電気泳動法

ゾルゲル法やナフテン酸化合物を用いた溶液プロセス、キャピラリー電気泳動法といった手法で、これまでになかった非晶質材料を開発しています。新しい蛍光体など光機能性材料としての応用を目指しています。

低環境負荷溶液プロセスの開拓と応用
―インクジェット・スピンスプレー・水熱合成・高周波誘導加熱―

1.前駆体溶液の作製、2.化学反応や3.光触媒反応の活用による機能性材料用のプロセス開拓を行っています。これらのプロセスにより、蛍光パターニング(図5(a))、中空ナノ粒子、ナノワイヤーアレイ光電極(図5(b))、透明導電膜(図5(c))、モバイルツール内のノイズを抑制する強磁性材料(図5(d))などの作製に成功しています。

(a)蛍光CaWO4の文字、(b)ナノロッドアレイ型光電極、(c)透明導電性ZnO膜、(d)電磁ノイズ抑制フェライト膜

図5 (a)蛍光CaWO4の文字、(b)ナノロッドアレイ型光電極、(c)透明導電性ZnO膜、(d)電磁ノイズ抑制フェライト膜

ナノ表面構造の形成とインプラント応用

金属ガラスやTi-Nb-Ta-Zr合金は高靭性、高比強度、高耐食性に優れ、次世代インプラント材料として期待されています。しかし、生体活性が不十分で、骨の主成分であるアパタイトを誘導し難いという問題点がありました。

水熱電気化学法により表面ナノ構造を制御することで、骨や歯肉等に適した表面状態創製を目指しています。

(a)水熱電気化学処理後の表面ナノ構造 (b)ラットの脛骨埋入後の組織観察

図6 (a)水熱電気化学処理後の表面ナノ構造 (b)ラットの脛骨埋入後の組織観察

ナノ構造制御とバイオ/エネルギー応用

機能性材料はナノ粒子化によって触媒活性の向上や超常磁性化など、ユニークな性質が得られます。それはバルクと異なる量子的性質が現れるからです。

これまで高結晶性・高分散性のナノ粒子やナノ構造を形成可能な低環境負荷溶液プロセスを開発してきました。

現在はコア-シェルナノ粒子、ナノロッドアレイ、自己組織化、磁性ナノシート、について研究を進めており、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、バイオセンサ、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)等への応用を目指しています。

磁性ナノ粒子を用いたDDSビーズ、バイオセンサ、SOFC用ナノ粒子

図7 磁性ナノ粒子を用いたDDSビーズ、バイオセンサ、SOFC用ナノ粒子

レーザー局所加熱によるガラスの成形・加工

高出力レーザーでガラスを加熱・熔融し、ガラスを成形したり、ガラスの内部を加工したりすることで、得られる形状や組成・構造変化を利用した光機能性素子の開発を行っています。

(a)レーザー局所加熱によるガラス球の作製 (b)CWレーザー背面照射法によるガラス内部への金属球の導入と移動

図8 (a)レーザー局所加熱によるガラス球の作製 (b)CWレーザー背面照射法によるガラス内部への金属球の導入と移動

超低閾値で動作するガラス微小球レーザー

真球状に成形したガラスは、とても小さなレーザー光源になります。さらに、ガラス微小球に光の入出力口として気泡やナノ構造を付与することで、太陽光のような自然光を有効に利用できる構造となります。とても低いパワーで動作する光機能性素子を実現できます。

(a)気泡含有ガラス微小球の発光強度マッピング (b)レーザー発振スペクトル

図9 (a)気泡含有ガラス微小球の発光強度マッピング (b)レーザー発振スペクトル

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 矢野哲司
E-mail : tetsuji@ceram.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2522

准教授 松下伸広
E-mail : matsushita.n.ab@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2523

※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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