材料系 News
材料組織の形成と発達機構の解明
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、材料組織の形成と発達機構の解明をめざす、藤居俊之研究室です。
金属分野
材料コース
研究室:大岡山キャンパス・南8号館410号室
教授 藤居俊之 助教 宮澤知孝
研究分野 | 金属組織 / 材料の力学特性 / 高導電性・高強度銅合金 / 金属疲労 |
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キーワード | 材料組織学、結晶学、材料強度学、金属疲労、相変態、ナノ粒子、電子顕微鏡、転位組織、配線用銅合金、超微細粒材料、小角X線散乱、放射光X線 |
Webサイト | 藤居研究室 藤居俊之 - 研究者詳細情報(STAR Search) 宮澤知孝 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
金属材料の中のミクロやナノといったスケールの微細な領域には対称性の高い美しい組織が形成されることがしばしば見られます。その組織を観察することは材料科学の一つの醍醐味です。さらに、材料組織は必ず何らかの理由をもって形成され、その材料が持つ物性と密接に結びついているはずです。観察した材料組織がなぜ、どのように形成されるかが理解できれば、それは新たな材料創成につながる知見となります。藤居研究室では、環境変化に応じて生じる材料内部での組織形成と組織発達を、電子顕微鏡や放射光X線を用いて定量評価し、材料組織学的立場から材料の特性発現の源を捉える研究を行っています。
金属材料の力学特性、電気特性、磁気特性などの材料物性と材料組織との相関を種々の実験を通して明らかにし、理論解析によって現象の説明と特性の理解を行っています。また、素材メーカーとの共同研究では、産業応用で発生する具体的な問題からのフィードバック研究も進めています。
金属材料を繰り返し変形すると、材料内部には図1や図2に示す転位組織が形成されます。これら転位組織は、材料に与える応力振幅やひずみ振幅の大きさに依存するとともに、繰り返し変形の進行に伴って発達していきます。しかし、その形成・発達機構には未解明な部分が残っています。純Cu単結晶において複数のすべり系が働いた場合に形成される転位組織(図3)などはその一例です。このような転位組織の形成・発達機構の究明を目的として、最新の超高圧走査透過型電子顕微鏡(図4)を用いた組織観察とその解析を進めています。
また、企業との共同研究では、試料を数ミクロンまで薄くした銅箔の繰り返し変形挙動も調べています。箔の繰り返し変形では、バルクとは異なる変形挙動が現れます。厚さが極めて薄い金属材料の特異な繰り返し変形機構の解明にも取り組んでいます。
パソコンやテレビなどの電気・電子機器に用いられる配線用銅合金には、高い強度とともに高い導電性が求められます。高強度化のためには、銅に異種元素を添加し、熱処理による析出強化を行います。しかし、一般に、材料強化のための異種元素添加は導電性低下を招きます。この問題を解決すべく、熱力学や相平衡論に基づく材料組織制御の手法を探求しています。また、巨大ひずみ加工による結晶粒超微細化に着目し、複数の強化機構の重ね合わせによる強度- 延性バランスの最適化や組織の熱的安定性向上にも挑戦しています。
大型放射光施設SPring-8では高エネルギー、高フラックスのX線による金属材料の分析が可能であり、回折や散乱によって材料組織の平均情報を非破壊で取得することができます。材料に放射光X線を照射し、透過した散乱X線より母相内に分散した析出粒子の大きさや形を評価する小角X線散乱測定、結晶格子からの回折X線よりひずみや結晶子サイズを評価するX線回折測定を用い、電子顕微鏡と組み合わせた多角的なアプローチによって金属材料組織を分析しています。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 藤居俊之
E-mail : fujii.t.af@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3143
※この内容は2016年3月発行の材料系 金属分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。