材料系 News

真島研究室 ―研究室紹介 #60―

サブ10 nmスケール材料の機能化と次世代電子デバイスの創製

  • RSS

2017.03.31

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、ボトムアップエレクトロニクスに関する研究を行う、真島研究室です。

教授 真島豊 助教 東康男

無機材料分野
材料コース
研究室:すずかけ台キャンパス・R3棟410号室
教授 真島豊 助教 東康男

研究分野 単電子デバイス / 分子デバイス / 走査型プローブ顕微鏡 / ナノ電子物性
キーワード 電子線リソグラフィ、無電解メッキ、単電子トランジスタ、分子トランジスタ
Webサイト 真島研究室別窓
真島豊 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
東康男 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

研究室の目指すもの
サブ10 nm材料の機能開拓と次世代電子デバイス開発

半導体集積回路は、たゆまぬ微細化技術の進展により、最小線幅が現在14 nm以下となっています。これらの微細化に伴い既存のデバイスは、ショートチャネル効果やリーク電流などによる消費電力の増大、製造コストの増大などが問題となっています。本研究室では、これらの問題を解決に導く、サブ10 nmスケールの材料を用いて、新しい動作原理に基づく次世代電子デバイスを一気通貫で開発しています。ここでは、4つの研究テーマを紹介します。

  1. 1.トップダウン手法によるギャップ電極構造作製
  2. 2.メッキによるナノギャップ電極作製
  3. 3.走査型トンネル顕微鏡(STM)によるサブ10 nm材料の物性評価・機能開拓
  4. 4.次世代サブ10 nmデバイス開発

4つの研究テーマ

1. トップダウン手法によるギャップ電極構造作製

サブ10 nmスケールの構造を作製するには、電子線を活用することが有効です。我々の研究室では、トップダウン手法である電子線リソグラフィ(EBL)を駆使して、ギャップ長10 nm程度のギャップ電極など、さまざまなサブ10 nmスケールの構造を作製しています。作製した構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて直接観察します。

電子線描画装置

走査型電子顕微鏡

2. メッキによるナノギャップ電極作製

サブ10 nm材料の電子機能を固体基板上で発現させるためには、材料の大きさに合わせた電極構造が必要です。私たちの研究室では、EBLで作製したギャップ電極に、無電解金メッキを組み合わせることで、3 nmのギャップ長を有するナノギャップ電極を作製するプロセスの研究を行っています。

金メッキ溶液は、金箔、ヨードチンキ、ビタミンCなどの安全な材料を用いています。金の自己触媒反応によりギャップ電極の部分でメッキが進行します。ギャップ長が狭くなると、自己停止機能が働き、ギャップ長3 nmのナノギャップ電極を1度に高収率で作製することができます。現在は、電解メッキにより、異種金属ナノギャップ電極を作製する手法の開発に取り組んでいます。

これらのナノギャップ電極は、サブ10 nmデバイスのプラットフォームとして利用します。

無電解金メッキの自己停止機能を用いたナノギャップ電極(ギャップ長3.0 nm)

無電解金メッキの自己停止機能を用いたナノギャップ電極(ギャップ長3.0 nm)

分子定規無電解金メッキによるギャップ長の精密制御

分子定規無電解金メッキによるギャップ長の精密制御

3. 走査型トンネル顕微鏡(STM)によるサブ10 nm材料の物性評価・機能開拓

走査型トンネル顕微鏡(STM)は、原子レベルの空間分解能を持つため、単分子やナノ粒子などのサブ10 nm材料の構造を直接観察することができます。さらに、サブ10 nm材料上にプローブの位置を固定して、走査トンネル分光(STS)により電流-電圧特性を測定し、電子物性を評価します。

我々はこれまでに、ナノ粒子のクーロンブロッケード特性(単電子特性)を評価し、単一分子配向スイッチ、分子間共鳴トンネルダイオード、単分子メモリなどの新しい機能を開拓しています。

STM/STSを用いて単分子やナノ粒子などのサブ10 nm材料の機能を自ら発見すると、ナノギャップ電極間に単分子やナノ粒子をナノギャップ電極に導入した電子デバイスにおいて機能を発現させる、次の段階に進みます。

走査型トンネル顕微鏡
走査型トンネル顕微鏡

自己組織化単分子膜上金属内包フラーレンの分子軌道
自己組織化単分子膜上金属内包フラーレンの分子軌道

(左・中)金属内包フラーレン単一分子配向スイッチ(右)ポルフィリン誘導体の室温単分子メモリ機能

(左・中)金属内包フラーレン単一分子配向スイッチ (右)ポルフィリン誘導体の室温単分子メモリ機能

4. 次世代サブ10 nmデバイス開発

EBLとメッキを用いて作製したナノギャップ電極の間に単分子やナノ粒子を吸着したサブ10 nmデバイスを開発しています。デバイスの電気特性は、低温プローバーと半導体アナライザを用いて測定します。

ナノ粒子をギャップ間に化学吸着させ、二重トンネル接合構造をつくると、電子1個の出入りによって電流の流れやすさが変わる単電子トランジスタとなります。我々の単電子トランジスタは、極めて安定に動作するため、論理回路動作やメモリ動作を実現することができます。

ギャップ間に単分子を化学吸着すると、分子デバイスになります。我々は、STMで発見した新しい機能を、分子デバイスとして実現する研究開発をしています。

次世代のデバイスとして、我々のサブ10 nmデバイスが、世の中で認識され、実用化に向けた開発につなげる研究開発を目指しています。

低温プローバー
低温プローバー

クローンダイアモンド特性
クローンダイアモンド特性

ダブルゲート単電子トランジスタによる2入力論理回路

ダブルゲート単電子トランジスタによる2入力論理回路

まとめ

真島研では、学生が自ら考え研究を進めることを基本としています。

国内および国際会議(海外)で研究発表を行うことを奨励しています。

2016年は修士1年生が海外の国際会議でBest Paper Awardを受賞しています。

就職先は、自動車メーカー、電気メーカー、化学メーカー、精密機器メーカーなど多様です。

国内外の大学・研究機関との共同研究を活発に行っています。

博士課程の学生は、英国ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所に3ヵ月研究留学しています。

博士の就職先は、東工大、東大、阪大、神戸大、電気メーカーの研究所、ベンチャーなどです。

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 真島豊
E-mail : majima@msl.titech.ac.jp

※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

  • RSS

ページのトップへ

CLOSE

※ 東工大の教育に関連するWebサイトの構成です。

CLOSE