材料系 News
光を使って量子と古典の境界を探る
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、凝縮系物質における光と電子や格子との相互作用のダイナミクスを解明すること目的として研究を行う、中村研究室です。
無機材料分野
材料コース
研究室:すずかけ台キャンパス・J1棟 913号室
准教授 中村一隆
研究分野 | 固体物理学 / レーザー科学 / 超高速現象 / 無機物質科学 |
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キーワード | 超短パルスレーザー、機能性物質、コヒーレント制御、量子古典境界 |
Webサイト | 中村研究室 中村一隆 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
21世紀は光の世紀と呼ばれています。太陽電池・光磁気ディスク・光触媒など物質の光機能を応用したデバイスを日常生活で使うことも多く、光の利用は環境負荷の小さいデバイスとしても注目されています。こうした光デバイスのさらなる高効率化・高速化を行うためには、光と物質の相互作用の基本的な物理をきちんと解明することが必要です。我々のグループでは、超短パルスレーザーを用いて光と電子・格子との相互作用を直接実時間で観測することで、その基本的な物理を研究しています。また、状態の計測だけでなく、光を使って物質の量子状態を制御することで新しい光機能を開発する研究も行っています。さらに、非常に短時間に存在する、固体物質中の電子状態や振動状態の量子性をさぐることで、量子力学的世界と古典的世界の境界を探ることも目的のひとつとして研究を進めています。
物質の格子振動の周期よりも十分短いパルス光を照射することで、コヒーレントフォノンと呼ばれる位相のそろったフォノン集団を励起することができます。コヒーレントフォノンはフェムト秒(10-15秒)時間分解能を持った過渡反射率計測によって測定することができ、フォノンの振動数・寿命・位相などを調べることができます。われわれは、半金属・半導体・超伝導物質・トポロジカル絶縁体・ダイヤモンドなど様々な物質を対象としてフォノンダイナミクスの研究を行っています。
電子デバイスの高速化・小型化にともない、電子・キャリアの振る舞いを実時間で調べることが必要不可欠になってきました。われわれは、光励起キャリアの振る舞いをフェムト秒レーザーパルスを用いて研究しています。対象物質は半導体・超伝導物質・トポロジカル絶縁体です。 GaAsを用いた実験では、光励起される光学フォノンと光学フォノンと電子集団運動であるプラズモンの結合モードをパルス列励起を用いて制御しました。またその制御性から、プラズモン振動がフォノンの生成に比べて約100 fs遅れて生成することを明らかにしました。
電子や原子・分子のようなミクロな世界は量子力学で記述される世界であるのに対して、我々が日常に目にする世界は力学で記述される世界です。では、量子力学的世界と古典力学的世界の境界はどこにあるのでしょうか?我々のグループでは、超短パルスレーザーを用いた分光実験を用いて、こうした物理学の根本的問題に取り組んでいます。
物質の量子性を超高速分光測定を用いて解明することで、「私達がいる世界をより深いレベルで理解する」ことを目指しています。また、大きな研究テーマの中で自分の興味のある研究課題を定め、楽しんで研究をすすめています。実験のテクニックや知識を身につけるだけではなく、「難しい問題に直面したときに、どうやって対処するのか」・「いかに論理的な考えかたが出来るのか」・「問題の本質はどこにあるのか」・「どうやって自分の考えをうまく他人に伝えるか」といった社会に出て必要となる能力を、研究をとおして学んでもらいたい。
日本応用物理学会、日本レーザー学会、日本物理学会、米国物理学会など
修士課程の学生の場合1回程度の国内学会発表、博士課程学生では海外の国際会議での発表を行っています。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
お問い合わせ先
准教授 中村一隆
E-mail : nakamura.k.ai@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5397
※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。