材料系 News
計算物質科学による物性予測・材料デザイン
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、計算物質科学による物性予測や未知の材料のデザインを行う、合田研究室です。
金属分野
材料コース
研究室:すずかけ台キャンパス・J1棟314号室
准教授 合田義弘
研究分野 | 物性理論 / 計算物質科学 / 磁性金属材料 / ナノ界面 |
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キーワード | 物性理論、磁性金属の電子論、計算物質科学、材料組織界面、ナノサイエンス、量子力学、統計力学、スーパーコンピューター |
Webサイト | 合田研究室 合田義弘里 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
物質・材料の原子配置や特性の多くは、電子の状態によって微視的に決定されています。その様な電子状態を、実験的・経験的パラメーターによらず、量子力学・統計力学の基本原理と素電荷やPlanck定数といった基礎物理定数のみから求める手法が第一原理電子状態理論です。我々の研究室の目指している所は、コンピューターの中で仮想的に物質を作り、その性質を調べる事により、単に実験結果を説明するだけではなく、まだ行われていない実験の結果を予測し、あるいはまだ作られていない未知の物質・材料を理論的にデザインする事です。
我々の興味の直接の対象は物質・材料中の電子です。当研究室では、永久磁石材料の材料組織界面からナノテクノロジーの基礎となる表面ナノ構造までの多彩な対象をターゲットとして、「京」やTSUBAME等の学内外のスーパーコンピューターを活用した大規模な第一原理計算を実行しています。電子状態理論の適用限界を広げるための手法開発も行っています。良い研究結果が得られれば、国際的な学術雑誌に結果を公表し、海外での国際学会で成果を発表する事が可能です。
風力発電タービンやモーター等の高温環境で用いる永久磁石材料を、希少元素を使わずに開発する事が社会的課題となっています。その開発指針を得るための学理を構築すべく、Nd-Fe-B(図1)やMn-Biといった永久磁石材料の第一原理計算を行っています。磁化反転挙動のメカニズムを解明するためには材料組織の効果を考慮する事が必須であるため、スパコンによる材料組織界面の大規模第一原理計算を行い、原子構造探査と磁気状態解析を行っています[Phys. Rev. Appl. (2016).]。磁性金属材料を電子論的に理解する事で新材料設計指針を提示する事を目指しています。
電子デバイスにおいて、素子のサイズがナノスケールまで微細化されると、材料内部だけでなく表面・界面の効果や量子効果が無視できなくなってきます。特に、表面・界面では物質内部には無い物性が現れる事があり、例えばAlNは非磁性絶縁体、MgB2は非磁性金属・超伝導体ですが、我々の物性予測によればこれらを接合した界面では2次元強磁性が発現します。また、Biの様な原子番号の大きい重元素を含むナノ構造では、ポテンシャル勾配と相対論効果が組み合わさる事により、特異なスピン状態を取る事があります。その様な金属ナノ構造に対して、第一原理計算から物理現象の理解を深化させ、その背後にある普遍的な法則を見いだす事を目指しています。例えば、Si(111)-B基盤上のBi(110)超薄膜の原子構造と電子状態の同定を実験と連携して行っています(図2)。
材料組織はマイクロメートルスケールの非常に大きなもので、その理論解析を十分行うためには第一原理計算と現象論的格子模型を組み合わせる事が有効です。また、磁化反転のダイナミクスや温度特性を記述するためにも格子模型は有用です。その様な格子模型と現実の物質を結びつけるために、格子模型でのパラメーターを第一原理計算により求める手法の開発を行っています。これまでには原子サイト毎の磁気異方性定数の計算手法を開発し、局所異方性解析に活用しました[Appl. Phys. Lett. (2014).]。
興味をもたれた方は気軽に合田まで詳細をお問い合わせ下さい。研究室所属の際には基礎的な量子力学・統計力学を習得している事が望ましいですが、プログラミング言語は必要になった時に身につければ良いと思います。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
准教授 合田義弘
Tel : 045-924-5636
※この内容は2016年4月発行の材料系 金属分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。