材料系 News

梶原研究室 ―研究室紹介 #52―

環境と調和する新しい導電性合金・超伝導合金の開発

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2017.03.03

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、ステディーな基礎研究とダイナミックな材料開発をする、梶原研究室です。

教授 梶原正憲 助教 Minho O

金属分野
材料コース
研究室:すずかけ台キャンパス・J2棟1409号室
教授 梶原正憲 助教 Minho O

研究分野 電子機器用導電性合金の開発と評価・解析 / 無鉛はんだ合金の開発と評価・解析 / 超伝導合金の開発と評価・解析/複相合金の組織形成と速度論
キーワード 電子デバイス用導電性合金の開発、環境調和型の導電性材料や超伝導合金の開発、反応拡散を利用した合金創製、固体熱力学や速度論に基づく相平衡・相変化の検討
Webサイト 梶原研究室別窓
梶原正憲 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
O MIN HO - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

はじめに

材料の物理的性質は、化学組成が等しくても材料組織を調整することにより、大きく変えることができる。材料組織を制御し目的とする物理的性質を備えた新しい材料を開発するためには、材料中で進行する材料組織の律速過程を理解することが極めて重要である。そこで本研究室では、材料組織変化の律速過程に注目し、相平衡熱力学や相変化速度論等の材料科学の基礎原理に基づき、種々の合金材料を対象とし、材料組織学的な実験手法を用いた体系的な研究を行っている。また、独自の速度理論を構築し、実験結果の理論的解析を行っている。これらの成果は、当該分野において世界的に高く評価されている。また、鉄鋼材料の研究を専門とする中田伸生研究室と緊密な連携をとり、幅広い合金材料を対象とする研究を実現している。図1は、2015年の秋に九州大学で開催された定期講演大会における記念写真である。

九州大学にて(2015年9月17日)

図1 九州大学にて(2015年9月17日)

主な研究機器について

実験研究では、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、波長分散型X線マイクロアナライザー、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー、X線回折装置、微分干渉型光学顕微鏡、インストロン型機械強度試験装置…等を活用している。一方、理論的解析には、UNIX系ワークステーションや画像処理コンピュータ等を使用している。

最近の研究テーマについて

1. 新しい無鉛はんだ合金の開発と評価・解析

Sn-Pb 系はんだ合金は、優れた電気的・機械的特性や経済性を兼ね備えた導電性接合用材料である。しかし、同はんだ合金を使用した電子機器を廃棄処分すると、酸性雨等によりPbが溶出し著しい環境破壊の原因となることが明らかになってきた。Pb汚染によるこのような環境破壊の拡大を食止めるためには、Pb(鉛)を一切含まない新しいタイプの無鉛はんだ合金の開発が急務である。このような社会的要請に応えるために、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Ni系、Sn-Bi系等のSn基無鉛はんだ合金が提案されてきた。しかし、これら既存のSn基無鉛はんだ合金は、Sn-Pb系はんだ合金の完全な代替材料になりきれていないのが現状である。そこで本研究室では、Sn-Pb系はんだ合金の特性を凌駕する新しい無鉛はんだ合金を開発するための基礎研究と応用研究を行っている。

2. 環境調和型の導電性合金の開発と評価・解析

通常の電子機器用導電性材料は、Cu基合金にNiを下地めっきし最表面にAuを被覆したAu/Ni/Cu基複層導電性材料が広く使用されている。しかし、このAu/Ni/Cu基複層導電性材料を上述のSn基無鉛はんだ合金ではんだ接合すると、最表面のAuが瞬時に消失し、溶融SnとNi層の反応拡散によりNi-Sn系化合物が生成する。また、通電使用環境下で発生するジュール熱によってはんだ接合部が加熱されると、Ni-Sn系化合物は成長する。しかし、Ni-Sn系化合物は電気抵抗が大きく脆いため、はんだ接合部の電気特性や機械強度が経年劣化する。そこで本研究室では、はんだ接合部の反応拡散を抑制し耐経年劣化特性を高めた新しい導電性材料を開発するための基礎研究と応用研究を行っている。

3. 環境調和型の超伝導合金の開発と評価・解析

微細なNb線を埋設したCu-Sn系合金を体積拡散が十分な速さで進行する高温度域で加熱処理すると、Nb細線とCu-Sn合金母層が反応拡散し超伝導特性を有するNb3Snが接合界面に生成する。このような反応拡散を利用した超伝導合金の創製法をブロンズ法と呼ぶ。本研究室では、ブロンズ法における反応拡散の速度論的な特徴に対する材料組織学的な理解を深めることにより、毒性元素を含まず優れた電磁特性を有する新しい超伝導合金を開発するための基礎研究と応用研究を行っている。

4. 材料組織変化の速度論的解析

前述の反応拡散による化合物の生成や一般的な合金材料で進行する組織変化は、反応初期では界面反応律速型で進行し、反応後期では拡散律速型に遷移する。本研究室では、界面反応律速型から拡散律速型への遷移過程が明確に観察できる合金系を見出している。そこで、この合金系に注目し、上記の遷移過程の一般的な特徴を明らかにするための実験研究を続けている。また、同遷移過程を定量的に記述するための速度理論を構築している。

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 梶原正憲
E-mail : kajihara@materia.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5635

※この内容は2016年4月発行の材料系 金属分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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