材料系 News

坂田研究室 ―研究室紹介 #48―

シンクロトロン放射光を使って環境材料の創成につなげる

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2017.02.17

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、高輝度シンクロトロンX線を利活用した原子配列、電子状態・構造の解析・評価から材料創製を目指す、坂田研究室です。

特任教授 坂田修身

無機材料分野
エネルギーコース
研究室:物質・材料研究機構(SPring-8内)(兵庫県)
特任教授 坂田修身

研究分野 機能性薄膜 / ナノ粒子 / 超薄膜材料
キーワード 酸化物薄膜、合金ナノ粒子、X線回析散乱、硬X線電子分光
Webサイト 高輝度放射光ステーション別窓
坂田修身 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

研究目的

アトミックスケールの構造解析による構造情報のフィードバックと電子構造の解明による材料情報の蓄積とを通じ、新材料の創成、機能向上や材料の産業への技術移転に貢献することを目指します。

研究活動の舞台

兵庫県の大型放射光施設SPring-8にある物質材料研究機構(NIMS)高輝度放射光ステーションです。さらに、共用ビームラインも利活用しています。最先端の回折・散乱や分光を駆使し非破壊で新材料を調べています。

研究テーマ例

高分子薄膜の機能向上、ナノ合金中の原子配列構造や電子状態と触媒機能の相関、金属有機構造体超薄膜材料の構造解析、薄膜の結晶性評価法の提案、強誘電体の電場印加in-situ構造解析、2次電池電極の特性向上のためのオペランド構造評価。

学生さんへ

世界最先端の量子ビーム施設のひとつであるSPring-8の高輝度放射光を使って、新材料を解析しましょう。社会人博士課程学生さんへ、企業の研究開発にも高輝度X線は利用されております。専攻の他の研究室と共同研究を進めています。

高速に運動している電子を磁石により蛇行させるとその接線方向に発生する高輝度X線(シンクロトロンX線)が材料科学などに利活用されています。

図1 高速に運動している電子を磁石により蛇行させるとその接線方向に発生する高輝度X線(シンクロトロンX線)が材料科学などに利活用されています。

研究紹介

学生さんが筆頭の論文である高分子薄膜に関する研究

酸素透過性の向上に関する研究
Polymer 55, 5843 (2014).
ナノファイバーを用いた結晶構造の制御に関する研究
Polymer 55, 4401 (2014).

触媒材料のナノ合金粒子の電子構造解析

実験室の光電子分光法では、物質のごく表面しか調べることができません。しかしシンクロトロンX線の硬X線光電子分光を用いると、約20ナノメートルまでの埋もれた部分にあるナノ粒子や触媒の価数などの化学結合状態や電子構造を解析できます。水素吸蔵特性をもつAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子の高輝度放射光光電子分光スペクトルを初めて測定(図2)しました。

Ag0.5Rh0.5合金ナノ粒子とPdナノ粒子の高輝度放射光光電子分光スペクトルの比較。占有準位である価電子帯の形状の類似性が初めて明らかにされ、占有準位の形状も水素吸蔵に寄与していると推定。Appl. Phys. Lett. 105, 153109 (2014).

図2 Ag0.5Rh0.5合金ナノ粒子とPdナノ粒子の高輝度放射光光電子分光スペクトルの比較。占有準位である価電子帯の形状の類似性が初めて明らかにされ、占有準位の形状も水素吸蔵に寄与していると推定。
Appl. Phys. Lett. 105, 153109 (2014).

エネルギー変換薄膜材料の構造評価

ガス吸着性やガス分子の分離や貯蔵機能を有するナノメートルスケールの空間を内部に有する金属有機構造体が注目されています。これまで粉末結晶でしたが、基板上にその超薄結晶を作製し、燃料電池などのエネルギー関連素子の開発が活発になっています。2次元構造が積み重なった薄層(図3)や2次元レーヤを柱状配位子でつなげた3次元型ナノ超薄膜(図4)の原子配列構造をシンクロトロンX線回折で評価しました。

コバルトポルフィリンが銅イオンで架橋された2次元構造が積み重なった薄層。Nature Materials 9, 565 (2010).
図3 コバルトポルフィリンが銅イオンで架橋された2次元構造が積み重なった薄層。
Nature Materials 9, 565 (2010).

基板に「杭」を打ち、配位子の柱で2次元レーヤを積み重ねたナノアーキテクチャー。J. Am. Chem. Soc. 134, 9605 (2012).
図4 基板に「杭」を打ち、配位子の柱で2次元レーヤを積み重ねたナノアーキテクチャー。
J. Am. Chem. Soc. 134, 9605 (2012).

薄膜の結晶性評価法の提案

NiO薄膜とLiを高ドープしたLi0.5Ni0.5O薄膜をシンクロトロン回折で調べました。固有の物理定数であるデバイ温度を求めました。デバイ・ワラー因子に注目し、結晶性を定量的に示す新しいパラメータを提案しました。

吉本研との共同研究の成果。

J. Appl. Cryst. 48, 1896 (2015).

強誘電体の電場印加in-situ構造解析

強誘電体薄膜に電場を印加し、逆ピエゾ効果で変形した格子歪をシンクロトロンX線回折により求めるとともに、電気分極を同時に求める測定をしています。この結果、電歪係数も決定できました。

舟窪研との共同研究の成果。

AIP conf. proc. 1234, 151 (2019).

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

特任教授 坂田修身
E-mail : SAKATA.Osami@nims.go.jp
Tel : 0791-58-1970

※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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