材料系 News
表面/界面科学に基づく地球環境材料の創製
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、表面/界面科学に基づく地球環境材料の創製をを目指す、中島・松下(祥)研究室です。
無機材料分野
材料コース・エネルギーコース
研究室:大岡山キャンパス・南7号館709号室 / 704号室
教授 中島章 准教授 松下祥子 助教 磯部敏宏
研究分野 | 環境 / エネルギー / 表面/界面 / 無機 |
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キーワード | 表面/界面、濡れ制御、触媒、セラミックス製造プロセス、コロイド、界面、熱電変換、プラズモニクス、ナノテクノロジー |
Webサイト | 中島・松下研究室 中島章 - 研究者詳細情報(STAR Search) 松下祥子 - 研究者詳細情報(STAR Search) 磯部敏宏 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
科学の究極の目的は自然の理を明らかにすることですが、工学、中でも環境に関する工学は、その目的の中心に常に『人間』の存在があり、科学を用いて、人々の豊かな未来を創造することが使命です。物質は人間のために使われて初めて「材料」となります。私たちは物質の科学を通じて、経済活動の持続的な成長を可能にし、安心・安全な社会の礎となる材料の研究を続けています。
環境材料の研究は「環境に調和した材料の研究・開発」だけではありません。私たちは「様々な環境問題に材料の視点から取り組む研究」はすべて環境材料研究である、と考えています。現在当研究室では、光照射等により水や空気中に存在する有機系有害物を分解する材料、省エネルギーを目指した撥水親水材料、大気からCO2等のガスを分離する材料、環境中の微量有害成分をセンシングする材料、エネルギー変換材料等に関する研究を行っています。
環境材料の研究は極めて裾野が広く、セラミックス、有機材料、金属といった様々な物質が対象になりますが、私たちはセラミックス材料に軸足を置き、物質の表面・界面に着目して研究を行っています。固体の表面はさまざまな化学反応の「場」であり、光・熱・電子などとの直接的な接点です。固体の表面・界面の構造や組成を制御すると、固体に本来はない性質を付与したり、固体の性質をこれまで以上に大きく引き出すことが可能になります。表面や界面の面白さは、その構造や組成の特徴が一定の条件を満足すると、それが極めて微細な(ナノレベルの)特徴であるにもかかわらず、目に見える形でのマクロな性質として具現化される点にあります。私たちはナノレベルでの表面・界面のエンジニアリングを通じて、材料科学の視点から地球環境問題に日夜挑戦を続けています。具体的な研究テーマの一部を以下に示します。
通常の環境触媒では紫外光が必要だったり、レアメタルを使用するなど、使用法によっては改善を要する点があります。当研究室では、可視光でも応答するための方法として、新しい空間空隙を持つ材料や、新規な触媒反応を導入することで常温常圧近傍で高価な資源を使わない触媒の開発を行っています。
表面のぬれ制御は省エネルギーや輸送コスト削減といった観点から非常に重要な分野です。液滴の濡れ性は通常静的濡れ性のみで評価されていますが、我々は独自に開発した液滴転落挙動解析システムにより、表面の濡れ性を動的な視点から解析し、新たな表面設計のアプローチを提案しています。
放射性物質やウィルスなど、現在の光学では検出しにくい微量有害成分を検出するため、第3の光学領域である人工物質、メタマテリアルやプラズモニクスデバイスの作製に、ナノファブリケーションの視点から挑んでいます。理論的に望まれる形を得るために、ボトムアップ手法、トップダウン手法双方のアプローチを取っています。
熱を電気エネルギーに変換する熱電変換システムは、将来の日本のコア技術の一つとなりえます。現状の熱電発電システムは高温部と低温部を必要とする複雑な構造をしており、また、その発電効率の低さが問われています。当研究室では本問題を解決するため、温度差不要な熱電発電システムの構築に挑戦しています。
地球温暖化ガスの回収と再資源化のキーテクノロジーはガスの分離技術の確立と言われています。そこで、処理速度と分離性能を両立するCO2/N2分離用セラミックスフィルタを作製しています。これまでに、CO2ガスのみが透過しづらいフィルタや、大気中から酸素のみを分離できるフィルタの作製に成功しています。
複数の素材を組み合せるエネルギーデバイスは、熱膨張による位置ずれや、各素材の熱膨張係数の違いが界面剥離や破壊などの故障を引き起こすことがあります。これらの熱膨張破壊を軽減するための無機フィラーを合成しています。また、これらのフィラー材をポリマーに配合することで、ポリマーの熱膨張率を金属並みに低下させることに成功しています。
研究室の教育・研究方針に、基礎学力を身に付けること、オリジナリティの高い研究に取り組むこと、研究者・技術者として社会性と国際性を持つことを掲げています。基礎学力と研究は教員と学生、あるいは学生間のディスカッションを通じて、日々高めるようにしています。国際性を身に付けるために必要不可欠な語学力は、ゼミ発表を英語で行う等の工夫で養っています。このようなゼミスタイルが後押しし、学生たちは夏季休暇などを利用して積極的に短期留学に参加しており、見聞を広めています。
すべての研究テーマは表面/界面化学と地球環境という2つのキーワードが共通しています。このような幅広い分野を取り扱うことは、学生の教育の上でも極めて有効と考えています。類似テーマをやっている学生が少ないため、学生が独立して研究を進める必要があり、学生の自主性と責任感が身についています。3人の教員のバックグラウンドがそれぞれ異なることからゼミや学会で担当しているテーマと異なる内容も勉強でき、学生の視野が広がります。一つ一つの研究は学生たちの努力の賜物と考え、出来る限り論文等、目に見える形で残すようにしています。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 中島章
E-mail : anakajim@ceram.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2524
准教授 松下祥子
E-mail : matsushita.s.ab@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2525
※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。