材料系 News
物質における機能性発現機構の解明と制御機能性材料における格子振動と相転移に関する物性研究
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、材料の機能性発現に深く関与する相転移現象の解明とその制御を目指す、川路研究室です。
無機材料分野
材料コース
研究室:すずかけ台キャンパス・J1棟701号室
教授 川路均
研究分野 | 無機 / 固体物性 / 機能性材料 / 熱的性質 |
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キーワード | 機能性材料、相転移、機能性制御 |
Webサイト | 川路研究室 川路均 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
多くの物質の機能性には相転移現象が大きな影響を与えています。例えば電気抵抗がゼロになる超伝導現象はある特定の臨界温度以下でしか発現しません。このような相転移現象の機構を明らかにすることは機能性物質の探査・設計において重要です。当研究室では、誘電体、磁性体、マルチフェロイックス、超伝導体、金属ガラス、イオン伝導体、ナノ細孔物質、イオン液体などおける相転移現象の機構解明とそれに基づいた相転移制御の可能性について研究しています。特に世界最高精度の断熱型熱量計による精密熱容量(比熱) 測定を用いて物質の標準エンタルピー、エントロピー、ギブズエネルギーなどの熱力学諸関数の絶対値を決定するとともに、各種物性測定や分光学的手法を駆使して結晶中の原子、分子運動の詳細を調べるなど、総合的な研究を進めています。
ある種の誘電体結晶では、逐次相転移現象、相転移が凍結したリラクサー、ある種の自由度(分子の配向など)の周期が結晶の並進対称性とずれた周期をもつインコメンシュレート相の発現相転移における巨大粒子サイズ効果などの興味深い現象が現れます。その機構解明に向けた研究を行っています。
2次元の三角格子や正四面体が頂点共有でつながったパイロクロア格子などで、反強磁性的な相互作用が競合し、複雑かつ特異な性質が現れます。これらの性質について、特に希釈冷凍機を用いた極低温での研究を行っています。
一般に無機塩の融点は高温ですが、室温で液体になるイオン性物質があります。これらは高イオン導電性、不揮発性、化学的安定性などの興味深い特性を持つことから注目を集めており、現在多くの研究が行われています。しかし、低融点の機構については解明されていない点が多く残されています。研究室ではイオン液体の熱力学的性質を調べ、特に融解現象を中心に解析を行っています。
燃料電池を始め各種電池材料やガスセンサーなどへの応用が期待されるイオン伝導体について、構造と熱物性およびイオン伝導機構との相関を調べています。とくにイオン伝導性を支配する欠陥構造について、極低温領域での精密熱容量測定により知見を得ています。またイオンの欠陥構造や微視的運動と巨視的物性量の関係を明らかにし、イオン伝導機構を解明するために分子動力学シミュレーションを行っています。
ナノメートルの細孔を有する金属錯体は結晶中に大量の分子を吸蔵することができます。さらに、吸蔵された分子に起因した相転移現象も現れます。本研究室では分子吸蔵機構や相転移機構を熱力学的立場から調べています。また、分子吸蔵機構についての計算機シミュレーションによる研究も行っています。
熱容量の周波数依存性や超微少試料での熱容量測定技法、精密熱膨張測定をはじめ、いろいろな新しい熱測定技法の開発研究を行っています。
教授 川路均
E-mail : kawaji@msl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5313
※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。