材料系 News
マイクロ・ナノマテリアルの新規創製技術の開発および材料評価
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、新規なマイクロ・ナノ材料創製技術の開発とともにマイクロサイズレベルでの材料の機能評価技術の研究開発を行う曽根研究室です。
金属分野
材料コース・エネルギーコース
研究室:すずかけ台キャンパス・R2棟920号室
准教授 曽根正人
研究分野 | マイクロ・ナノデバイス / 反応工学・プロセスシステム / 高分子・繊維材料 / 材料加工・処理 |
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キーワード | 表面処理、高分子工学、化学工学、材料工学 |
Webサイト | 曽根研究室 曽根正人 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
次の時代に要求される技術はどのようなものが求められているだろうか?材料工学の分野においては、ナノメーターオーダーで材料の構造制御により新機能性を持たせたマイクロ・ナノマテリアルの開発はその答えの一つである。当研究室では、新規なマイクロ・ナノ材料創製技術の開発とともにマイクロサイズレベルでの材料の機能評価技術の研究開発を行っている。また同時に、材料・構造物のプロセス評価と組織解析によるナノ構造の形成メカニズムの解明、マイクロマテリアル強化法への応用に関する基礎的な研究も行なっている。
現在、半導体製造技術では、DRAMハーフピッチ(hp)が14 nmという超微細配線技術の確立が求められている。同時に、半導体製造技術を応用した微細電子機械システム(MEMS)の要素技術開発が世界的な規模で行われている。本グループでは、この技術的要請に基づき、新規なナノマテリアルの創製技術の開発を行っている。
1つ目は、二酸化炭素を反応媒体に用いる新規な表面処理手法の研究開発である。超微細な構造体の洗浄技術である超臨界二酸化炭素の洗浄に、当研究室で開発された超臨界無電解めっき(SNELP)法や超臨界ナノプレーティング(SNP)法を融合することで、超微細配線を可能としている。図1に、直径が60 nm・深さ120 nmの埋込孔に、我々が開発した方法を用いてCuを埋め込んだサンプルを、FIBで表面を加工し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す。この図より、このような微細な埋込孔にCuが欠陥無く埋め込まれていることがわかる。注目すべき点は、埋め込まれたCuが単結晶であることである。この結果は、新規手法が、結晶成長次元を制御し、無欠陥単結晶で配線可能であることを意味している。この技術を洗練させるとともに、段差被覆性や密着性の定量的評価を行う。
2つ目としては、金属材料の新しい展開として世界的に着目されている金属ガラスを、無電解合金めっき手法で作成する技術の開発である。金属ガラスは通常構成元素の溶融・混合により作製するが、我々は、電気学的作製法の一つである無電解めっき法を用いて作製を試みた。この結果、バルク材料と同じようにガラス転移点が観測されること、更に図2に示すような微細ナノ構造が観測されることを明らかになった。この内部構造は、金属ガラスの力学的物性に大きく影響する。更にこの技術により、パターン化された基板への金属ガラスの埋め込みが可能となる。また、この金属ガラスは無電解めっきの触媒として機能し、この触媒を用いると超平滑な無電解Ni-P金属表面が得られることがわかった。
マイクロサイズの構造を有する材料を作成した場合、構成する結晶粒の形状と結晶方位がその機械的強度に影響を与える。本研究室では、金属材料の特定の組織から、マイクロメートルレベルの片持梁試験片や柱状試験片を作成し、その曲げ強度や降伏強度を測定している。図3に柱状組織を有するNiめっき皮膜から、結晶成長軸に対し長軸方向を平行(膜厚方向)あるいは垂直(膜面方向)にして集束イオンビーム装置(FIB)により作製したマイクロ片持梁試験片を示す。この試験片を当研究室が構築したマイクロ材料試験機で曲げ強度を測定したところ、強度に大きな差が見られた。めっき皮膜の膜厚および膜面方向の強度をそれぞれ独立で測定した研究は現在まで報告例がなく、材料工学の観点から大きな成果と言える。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
准教授 曽根正人
E-mail : sone.m.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5043
※この内容は2016年4月発行の材料系 金属分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。