材料系 News

矢野・吉田研究室 ―研究室紹介 #37―

苛酷環境に耐える高性能セラミック材料を創製する

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2017.01.10

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、原子力・核融合分野や宇宙航空分野等の苛酷環境下での適用を目指した先進セラミック材料の開発を行う、矢野・吉田研究室です。

教授 矢野豊彦 准教授 吉田克己

無機材料分野
原子核工学コース
研究室:大岡山キャンパス・北2号館223号室 / 221号室
教授 矢野豊彦 准教授 吉田克己

研究分野 耐苛酷環境材料科学 / セラミックスの中性子照射損傷 / 格子欠陥と固体物性 / セラミックス基複合材料 / 高機能セラミック多孔体 / 原子力・核融合炉用材料
キーワード 原子炉・核融合炉材料、セラミックスの中性子照射損傷、欠陥と固体物性、苛酷環境下の材料物性、セラミックス基複合材料、耐苛酷環境性材料、高機能セラミック多孔体、原子力・核融合炉用材料
Webサイト 矢野・吉田研究室別窓
矢野豊彦 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
吉田克己 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

研究の特徴

矢野豊彦 教授

高温ガス炉や高速増殖炉・核融合炉などで使用される材料は、高エネルギー中性子をはじめとする多量の粒子線に照射され、なおかつ高温や高熱勾配、腐食性雰囲気という苛酷な環境で使用される。本研究室では、これらのエネルギーシステムが安全に機能するために必要となる、複合した苛酷環境におかれたときの材料の振舞いを明らかにし、さらにそれらに耐える材料の開発を行っている。

吉田克己 准教授

セラミック材料は、耐熱性、耐食性、耐摩耗性等の優れた特性を有するため、金属材料の適用が困難とされる苛酷環境下での適用が期待できる魅力的な材料である。セラミック材料を部材として適用するためには、部材としての信頼性の向上に加えて、それぞれの用途に応じた特性・機能付与を図る必要がある。ナノ、ミクロあるいはマクロレベルでの微構造制御に基づく信頼性の向上や特性・機能付与に注目し、原子力・核融合分野、エネルギー・環境分野、宇宙航空分野等の苛酷な環境下での適用を目指した先進セラミック材料の開発を行っている。

研究の概要

矢野豊彦 教授

1. 原子炉・核融合炉用セラミックスの中性子照射損傷の研究

材料のナノ構造解析に威力を発揮する高分解能電子顕微鏡(研究室保有)

材料のナノ構造解析に威力を発揮する高分解能電子顕微鏡(研究室保有)

中性子を重照射した窒化ケイ素(Si3N4)の高分解能電子顕微鏡写真

中性子を重照射した窒化ケイ素(Si3N4)の高分解能電子顕微鏡写真

セラミックスは発電用原子炉や高速増殖炉では核燃料をはじめ制御材などに、また開発中の高温ガス炉では、燃料や燃料被覆材に使用されている。さらに夢のエネルギー源として21世紀中旬以降の実現を目指して研究開発途上の核融合炉においては、第一壁材料、トリチウム増殖材、各種電気絶縁材などにセラミックスが必要不可欠となる。また、セラミックスは金属材料に比べ長寿命の放射性物質の生成が極めて少なく、この意味でも原子力分野へのセラミックスの適用が求められている。セラミックスに限らないが、材料が高速中性子の照射を受けると、原子のはじき出しなどが起こり、微細構造が変化して種々の物性に大きな影響を与えるので、この変化をあらかじめ予測し制御する必要がある。この研究では、炭化ケイ素や炭化ホウ素、窒化アルミニウム、スピネル、アルミナ、ダイヤモンドなどの物質を実際に中性子照射して、原子配列を直接見ることのできる高分解能電子顕微鏡をはじめ、X線回折法などにより微構造の変化を明らかにし、さらに熱伝導率、電気抵抗、機械的強度などの物性変化との関連を調べている。固体物性論や材料科学の知識が主な研究基盤となる。

2. 耐苛酷環境材料の開発
放射線照射下をはじめ、超高温、高熱勾配下あるいは腐食性環境で使用可能な新規材料の作製を目標に、長繊維SiC強化セラミックス複合材、全酸化物繊維強化複合材などのいくつかの候補物質を取り上げ、合成とその物性評価を行っている。この研究には、放射線照射によってその物性をより良くすること、あるいは、新規な機能性をもたせる試みも含まれている。

吉田克己 准教授

1. 先進セラミックス基複合材料に関する研究

炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素基(SiCf/SiC)複合材料の微構造SEM写真

炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素基(SiCf/SiC)複合材料の微構造SEM写真

セラミックスを部材としての適用を考えた場合、脆性という材料としての信頼性の低さに問題がある。そのため、セラミック繊維を複合化し、信頼性の向上を目指した繊維強化セラミックス基複合材料が注目されている。例えば、セラミックス繊維を強化材とした先進セラミックス基複合材料は、原子力・核融合炉、高温ガスタービンや宇宙航空産業等の苛酷環境下での適用が期待されている。本研究では、界面・微構造制御に基づいた繊維強化セラミックス基複合材料の創製とその特性評価や様々な機能・特性の付与を目指した特異な構造を有する先進セラミックス基複合材料の研究を行っている。

2. 高機能セラミック多孔材に関する研究

その場粒成長炭化ケイ素(SiC)多孔体の微構造SEM写真

その場粒成長炭化ケイ素(SiC)多孔体の微構造SEM写真

環境負荷低減や省資源・エネルギー化を図る上で、セラミック多孔材の活用が有効であると考えられる。本研究では、高機能セラミック多孔材の創製に関する研究を行っている。現在、独自に提案した「その場結晶成長・粒子配向」等を利用した機能付与や、用途に応じたナノ~マクロレベルでの気孔径制御を軸とした基礎研究を行っている。また、放射能汚染水の浄化及び固定化が可能な多孔質セラミック材料の開発も行っている。

3. 耐苛酷環境性セラミックスに関する研究
セラミックスは、高温、高熱勾配、腐食性雰囲気、放射線・粒子線照射等の苛酷環境下での使用が期待されている。本研究では、苛酷環境下に曝された材料の特性・微構造変化を明らかにし、得られた結果をもとに、苛酷環境に耐えるセラミック材料の開発を目指している。原子力・核融合炉分野での適用を目指した材料開発として、微構造制御及び高次構造制御による事故耐性燃料への適用を目指した新規セラミック材料の開発、高速炉用革新的セラミック制御材の開発や長寿命放射性核種核変換用セラミックマトリックスの開発を行っている。

矢野・吉田研在籍学生(2015年12月現在)

  • D3:1名(留学生)
  • D2:1名(留学生)
  • M2:5名(留学生1名)
  • M1:2名(留学生1名)
  • 研究生:1名(留学生)

研究室OB 就職状況

京都大学、九州大学、産業技術総合研究所、電力会社各社、日立、東芝、三菱重工、IHIなどの総合電気、プラント関連会社、日本原子力開発機構、原子力規制庁などが多いが、三菱総研、野村総研、ソフトウエア関連もいる。無機材料修了生が就職しているところにプラスして原子力関連の会社があると考えればよい。

共同研究

日本原子力研究開発機構(JAEA)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、物質・材料研究機構(NIMS)や企業と共同研究をしている。また、海外の大学とも共同研究を行っている。

学生に望むこと

自主性
規制は少なく自由である。やりたいことができる。受け身の姿勢から自ら行う姿勢に変わる時。
協調性
研究室は1つの社会、家族のようなもの。そこから学ぶこと、生まれることが多い。
研究室希望者へ
本研究室の研究環境は恵まれています(ニュークリアセラミックス実験室が使える)ので、やる気次第でどんどん進んでいけます。外国で開催される国際会議で発表することも夢ではありません。21世紀を支える材料研究を一緒にやりましょう!

矢野・吉田研究室

矢野・吉田研究室

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 矢野豊彦
E-mail : tyano@nr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3380

准教授 吉田克己
E-mail : k-yoshida@nr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2960

※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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