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鶴見・武田研究室―研究室紹介 #36―

フォノンを自在に操り次世代電子材料の創製へ挑む

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2017.01.06

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、フォノンを自在に操り次世代電子材料の創製へ挑む、鶴見・武田研究室です。

教授 鶴見敬章 准教授 武田博明 助教 保科拓也

無機材料分野
材料コース・ライフエンジニアリングコース
研究室:大岡山キャンパス・南7号館509号室 / 508号室
教授 鶴見敬章 准教授 武田博明 助教 保科拓也

研究分野 フォノニクス / 誘電体・強誘電体材料 / エネルギー貯蔵用キャパシター / 圧電結晶・デバイス
キーワード フォノン解析、誘電体・強誘電体、キャパシタ、圧電デバイス、酸化物結晶、結晶成長、圧電材料、バイオセンサ
Webサイト 鶴見・武田研究室別窓
鶴見敬章 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
武田博明 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
保科拓也 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

セラミックス電子材料の応用例

図1 セラミックス電子材料の応用例

原子・イオンは固体(結晶)中で規則的に振動し(フォノン)、そのフォノンは材料の特性、特に電磁気や光に関係する性質に深くかかわっています。私たちの研究室では、ナノメートルサイズで物質の構造を変化させ、フォノンに関わる材料の特性を大きく向上させるための研究と、その基礎となる学問体系を創っています。 私たちの研究室では、安全で安心な社会の構築に貢献する環境・エネルギー・医療に関連した電子セラミックス材料・素子の開発を行っています(図1)。

物性の起源を知る(フォノンを観察する)

私たちの身の回りにある電子機器・機械の中には電子セラミックス素子が数多く使用されており、それは材料個々の特性である導電性、絶縁性、磁性、誘電性、強誘電性などを利用しています。これらの性質の多くは格子振動(フォノン)が大きく関与していることが知られています。私たちの研究室では、独自開発した方法でテラヘルツ領域(1011~1014 Hz程度)の誘電特性を測定し、フォノンの振舞いを解析しています(図2)。“フォノンを観察する”ことにより物性の起源が明らかにし、その知見を新たな材料開発に応用します。

関連する学生研究テーマ
  • テラヘルツエリプソメータを用いた誘電体材料のフォノン解析
  • ペロブスカイト系酸化物の分極応答の解明
  • 高温耐圧スナバコンデサ用誘電体セラミックの絶縁破壊機構の解明

図2

図2

物性を変えるテクノロジー(フォノンを操る)

図3

図3

セラミックス中にある粒界(結晶粒子同士の境目)の構造をナノメートルオーダーで制御すると、セラミックスの物性を劇的に変化させることも可能です。私たちの研究室では、巨大な誘電率が期待できる界面分極を利用した粒界絶縁型(BL)キャパシタに着想を得て、今までにない高容量を持ったコンデンサの開発を目指しています(図3)。

関連する学生研究テーマ
  • SrTiO3系ナノ粒子を用いた新規界絶縁コンデンサの開発
  • (Li,La)TiO3-(Ba,Sr)TiO3系高誘電率材料の開発

図4

図4

また、従来とは異なる材料探索手法により、よく知られている材料でもその物性を劇的に変化させることができます。これまで、強誘電体材料の研究分野の中心はペロブスカイト型酸化物で陽イオン種を変化させることで物性が制御されてきました。私たちは計算科学・理論・実験を通して陰イオン(酸化物イオン)の変化によっても誘電特性が向上する可能性を見出しました(図4)。この現象をフォノンの観点から詳細を明らかにし、応用すれば(つまり、フォノンを操れば)電子機器のさらなる特性向上が期待できます。

関連する学生研究テーマ
  • ペロブスカイト型酸窒化物の合成と誘電特性評価

環境・エネルギーに貢献するモノ作り(フォノンを活かす)

電気自動車(EV)の走行距離を延ばすため、また太陽光発電を効率良く利用するためには、電気を貯める『蓄電池』をいかに大容量にするかがカギになります。私たちはこれまで培ったフォノンの知識を活かして、リチウム電池をはるかに凌ぐ容量をもち、短時間で充電できる次世代固体キャパシタを開発しています。このキャパシタが実現できれば10分間の充電で500キロメートル走るEVも夢ではありません。

関連する学生研究テーマ
  • リチウムイオン伝導体の新しい電解コンデンサへの応用
  • 導電性セラミックスを用いたキャパシタ材料の作製と電気的特性の評価

図5

図5

地熱・火力発電所施設の非破壊検査による安全管理、化学プラントでのダストモニタによる環境配慮、自動車・船舶のエンジン燃焼圧モニタリングによる燃焼効率アップは今後ますます重要になってきます。これらの要素技術として圧電材料を用いたセンサが必須となり、これには高温で(1)高い化学安定性、(2)安定な圧電特性、(3)高い電気抵抗率を有し、(4)結晶化が容易な圧電結晶が必要です。しかし、これまで全ての条件を満たす結晶は見つかっておりませんでした。私たちは高い電気抵抗率には酸素欠損を生じない結晶構造が有効であるとの材料開発指針を立て、最近、新材料の探索に成功しました(図5)。さらに、センサ構造も設計・試作・評価することで高温圧電センサへ展開できる基盤を作っております。

関連する学生研究テーマ
  • 燃焼圧センサ応用へ向けた人工ゲーレン石の圧電特性評価
  • 人工ゲーレン石の圧縮強度を考慮した燃焼センサ素子の設計

私たちの研究室に入ったら...

私たちの研究室に入ったら...

私たちの研究室は誘電体の研究では日本を代表する研究室です。研究室運営のモットーは“自由と自覚”です。研究目標は教員が提案しますが、これに至る経緯は学生自身が考え自由な発想で研究を進めます。ただし、これは放任とは異なります。困ったことがあれば教員全員で全力バックアップし、学生同士でもお互い助け合っております。そうすることで、高い研究レベルが保たれ、学生による自発的な学会発表や論文投稿に繋がり、さらにその後の就職に繋がっていきます。

学生が筆頭著者である論文の掲載誌(最近5年間)
  • Appl. Phys. Lett. 1報
  • Appl. Phys. Express 1報
  • IEEE Trans. Ultra. Ferro. Freq. Contr. 2報
  • J. Appl. Phys. 1報
  • Jpn. J. Appl. Phys. 4報
  • J. Ceram. Soc. Jpn. 9報
学生の学会発表による受賞(最近5年間)
  • 応用物理学会学術講演会講演奨励賞 2件
  • 日本セラミックス協会秋季シンポジウム最優秀ポスター賞 4件
  • 同優秀ポスター賞 2件
  • エレクトロセラミックス研究討論会最優秀賞 1件
  • 同優秀賞 4件
  • 同奨励賞 2件
過去10年の主な就職先(人数)
村田製作所(7)、パナソニック(5)、富士ゼロックス(4)、キヤノン(3)、NTT(3)、フジクラ(3)、旭硝子(2)、SONY(2)、特許庁(2)、日揮(2)、TDK(2)、住友電工(2)、日本特殊陶業(2)、成田国際空港(1)、JR 東日本(1)、スズキ(1)、オムロン(1)、本田技研(1)、東京医科歯科大学、慶應義塾大学、岡山大学(教員として各1 名) 等

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 鶴見敬章
E-mail : ttsurumi@ceram.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2517

准教授 武田博明
E-mail : htakeda@ceram.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2520

※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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