材料系 News
身近な結晶で電子の世界を覗く
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、身近な結晶で電子の世界を覗く、佐々木研究室です。
無機材料分野
材料コース
研究室:すずかけ台キャンパス・J1棟508号室
教授 佐々木聡 特任准教授 奥部真樹
研究分野 | 構造物性と電子磁気構造 / 放射光X線の回析・ 散乱・分光 / 共鳴磁気散乱 / 計算物理 |
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キーワード | 結晶科学、共鳴散乱、電子密度、酸化物 |
Webサイト | 佐々木研究室 佐々木聡 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
固体の電子的な性質(機能や物性)と結晶構造との関係を知ることは、エレクトロニクスを始めとする多くの分野で重要です。研究室では、ミクロ領域で結晶構造や電子構造が、どのようにマクロの世界にかかわっているかを明らかにしたいと考えています。
このため、セラミックスなど機能性材料の結晶構造解析、混合原子価化合物での相転移や電荷秩序・価数揺動の研究磁気吸収やX線共鳴磁気散乱による磁性材料の研究、機能性酸化物の電子状態の研究、計算機シミュレーション、高温高圧下での構造物性研究、地球・惑星物質の局所構造解析、地球環境を考慮した高集積熱電変換や廃熱回収システムなどの研究課題を実施しています。
光が物質にあたると、吸収・散乱・回折現象などが起きてその電子状態が変化します。物質を構成する原子の大きさや物質内電子のエネルギーに合せた光(X線)を用いると、原子や分子の配列や結晶の電子状態を研究できます。
これらの先端的研究には、シンクロトロン放射光や中性子など量子ビームの利用が不可欠です。特に研究室では、回折散乱に分光学的手法を取り入れた放射光測定技術の開発に力を入れ、結晶内原子の電子状態を研究しています。
放射光の連続光という特徴を利用した共鳴散乱で、Eu3S4の価数が異なるEuイオンを区別し、電荷秩序を求めた実例を図1に示します。
放射光の特徴である直線偏光を円偏光に変換することで、共鳴磁気散乱効果から、フェリ磁性を示すマグネタイト(Fe3O4)の不対電子の状態密度(DOS)を原子が占めるサイトを区別しながら実験的に求めることができました(図2)。この結果は、1sから3d(4p)に移る電子遷移と密接に関係しており、第一原理計算によるDOSともよい一致を示しました。
軌道磁気とスピン磁気モーメントは、マクロな磁性を理解する上で基本的な量です。研究室では、磁気光学効果(X線磁気円二色性、XMCD)や磁気散乱の実験により、遷移金属・希土類元素酸化物の電子状態や磁気状態を研究しています。NiFe2O4のXMCDスペクトルとFeイオンの理論電子密度分布を示します(図3)。
結晶構造解析では、電子密度分布が求められます。例えば、図2のE=7.109 keVのX線を選んで磁気共鳴散乱を測定すれば、その電子遷移が関係するe軌道とt2g軌道の電子の空間的な広がりがフェリ磁性を示す正負ピークとして観測できます(図4)。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 佐々木聡
E-mail : sasaki@n.cc.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5308
※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。