材料系 News
機能性材料で築く 環境と社会とくらし
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、機能性金属材料の特性評価を多角的に行うことで新材料を開発し、豊かな現代社会の構築への貢献を目指す、小林郁夫研究室です。
金属分野
材料コース・ライフエンジニアリングコース
研究室:大岡山キャンパス・南8号館207号室
准教授 小林郁夫
研究分野 | 非鉄金属材料 / 生体材料 / 機能性材料 / 医療機器の標準化 |
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キーワード | 非鉄金属材料の材料設計と特性評価、生体材料の開発と評価、機能性材料の特性評価、チタン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金、複合材料、多孔質材料、粉末冶金、医療機器の国際標準化 |
Webサイト | 小林研究室 小林郁夫 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
様々な特性を有する機能性金属材料は、現代社会のいろいろな場面で活躍しています。優れた機能を発揮する材料を設計するためには、相安定性、熱力学、結晶学などの材料科学の基礎的な知識の上に、形状付与や熱処理などの加工プロセス、組織制御などの技術を積み重ねて、その結果得られる種々の機能特性を評価することが必要です。当研究室では、チタン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金、複合材料などを開発し、それぞれの用途に応じた特性評価を多角的に行っています。こうして生み出された新しい材料は、生体材料、輸送機器用材料、電子機器用材料などとして、豊かな現代社会の構築に貢献することが期待されています。
骨などの硬組織に接合して用いるインプラント材料の弾性率は、骨のそれ(10~30 GPa)に近いことが求められています。これは生体骨とインプラント材料の間の弾性ミスフィットに基づく応力遮蔽(stress shielding)による骨形成障害を防止するためです。多くの生体用金属材料の中で、純チタンの弾性率はもっとも低く、およそ100 GPa です。これにニオブなどの元素を添加したβ型チタン合金(図1)では、その結晶構造に由来して、およそ80 GPa まで低下することが知られています。当研究室では、チタンよりもさらに弾性率の低いマグネシウムの実用化に向けた取り組みを進めるとともに、チタン合金の多孔質化、単結晶化と方位制御など、様々なアプローチによって生体金属材料弾性率のさらなる低減を進めています。Ti-Zr-Nb合金単結晶ではおよそ40 GPaという低弾性率を達成しました。
近年、次々と開発・導入された新しい医療技術や新しい医療機器には、高度な機能性をもつ新しい生体材料が求められています。先端付近に電極のついたカテーテルを心臓内に挿入し、不整脈の原因となっている心筋組織を焼灼して不整脈を治す、カテーテルアブレーションという治療法が注目を集めています。このカテーテル電極には、強さ、延性、加工性などの力学的特性に加え、電気伝導性、X線透視下での視認性(図2)など、様々な機能性が求められています。当研究室ではジルコニウムとハフニウムを主成分とする新しい合金を開発し、アブレーションカテーテルに必要とされる特性評価を行っています。
航空宇宙用、高速車両用、建築用ならびに電子機器用の軽量で高強度・高靭性のアルミニウムの開発や、強度と高導電率をかねそなえた新しい銅合金の開発を進めています。これらの合金では、時効析出現象を利用して強度を高めることが有効です。時効した試料は、電子顕微鏡観察、3次元アトムプローブ、熱分析、電気伝導率測定、硬さ測定などの手段で、多角的に評価しています。
また、高強度マグネシウム合金の開発を目指し、マグネシウム粉末と遷移金属粉末を利用した粉末冶金法によってマグネシウム基複合材料(図3)を開発しています。マグネシウムと遷移金属との反応を利用して、軽量で高強度な複合材料の開発に成功しました。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
准教授 小林郁夫
E-mail : equo@mtl.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3139
※この内容は2016年4月発行の材料系 金属分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。