材料系 News
プロセスの先に見えるセンサーとエネルギー
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、セラミック薄膜を舞台として新たなサイエンスの探求とエンジニアリングの創出に挑む、篠崎研究室です。
無機材料分野
材料コース
研究室:大岡山キャンパス・南7号館611号室
教授 篠崎和夫 助教 塩田忠
研究分野 | セラミック薄膜 / セラミックセンサー / エネルギーセラミックス |
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キーワード | セラミック薄膜の構成元素、不定比性、不純物分布、結晶構造や微構造を制御することにより、新しい性質をもつセラミックスを創製する |
Webサイト | 篠崎研究室 篠崎和夫 - 研究者詳細情報(STAR Search) 塩田忠 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
ナノメートルスケールの厚さしかないセラミック「薄膜」は、普段目にする「バルク」とは異なる性質を示すことがあり、時として量子効果が現れることもあります。それらの性質は、バルクと同じように作り方(プロセス)によっても大きく変化します。薄膜に特徴的な性質を得るためには、構成元素、不定比性、不純物分布、複雑な結晶構造や微細組織などを精密に制御するプロセッシング技術が必要です。
私たちは、セラミック薄膜の特性を改善したり新しい性質を生み出したりする薄膜プロセッシング技術を追求し、得られた特徴的な物性の背景にある物理や化学を解き明かし、次世代デバイスへの応用技術を確立する、ことを目指して研究しています。
YSZあるいはCeO2/YSZ を製膜したSi基板上に、SrO、MgO、TiO2などの原子層レベルの薄膜導入により、目的とするSrRuO3(酸化物電極)、Pb(Zr,Ti)O3、BiFeO3(強誘電体)の配向制御に成功しています。現在は、他の材料系にも展開し、結晶成長理論に基づくバッファー層の科学とその積層プロセス技術の確立を目指した研究を進めています。
YSZ単結晶基板表面に、柱状組織を持つYSZ薄膜を製膜してナノスケールの表面粗さを付与すると、その上のPtナノ薄膜が、加熱により自己組織化的にナノ構造化することを見出しました。この研究を進め、再現性良く制御されたナノ構造が作製できるようになれば、現在のリソグラフィー技術よりも簡便な金属ナノ構造作製方法として応用が期待できます。
最近、抵抗変化型メモリ(RRAM)用酸化物薄膜の抵抗スイッチング時に、量子化伝導の発現が報告されています※。私たちは、RRAM用薄膜の構成元素、組成、微構造と量子化伝導発現の関係に注目し、量子化伝導発現機構の解明やRRAMの多値化への応用を目指した研究を行っています。
※C.Chen et al., Appl. Phys. Lett., 103(2013) 043510.
現在、エネルギー・環境問題の観点から、酸素センサやμSOFCなどの電気化学デバイスを低温で駆動することが求められています。私たちは、(La,Sr)(Co,Ni)O3薄膜電極が、YSZ酸素センサの低温動作に有効であることを示しました。今後は、従来の電気化学的な解析手法だけでなく、表面科学的な分析手法も加えて、その電極での表面化学反応過程を明らかにし、低温でより高性能な電極の開発に役立てて行きます。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 篠崎和夫
E-mail : ksino@ceram.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2518
※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。