材料系 News
エネルギーと環境問題解決にチャレンジする革命的耐熱金属材料の設計指導原理
材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、エネルギーと環境問題解決にチャレンジする革命的耐熱金属材料の設計指導原理の構築に取り組む、竹山雅夫・小林覚研究室です。
金属分野
材料コース・エネルギーコース
研究室:大岡山キャンパス・南8号館506号室/505号室
教授 竹山雅夫 講師 小林覚 特任助教 中島広豊
研究分野 | 耐熱金属材料 / 金属間化合物 / 組織制御 / エネルギーと環境 |
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Webサイト | 竹山・小林研究室 竹山雅夫 - 研究者詳細情報(STAR Search) 小林覚 - 研究者詳細情報(STAR Search) 中島広豊 - 研究者詳細情報(STAR Search) |
地球は「鉄(Fe)」の星、といっても過言ではありません。それは宇宙の誕生とともに始まった核融合の終焉の元素、最も安定な元素だからです。人類はこの地上に豊富にある鉄の進化とともに発展してきました。そして今、我々は、エネルギー問題、環境問題に直面しています。CO2排出量の3割は発電部門、2割は輸送部門によるものです。環境への負荷を最小化し、安全安心・持続可能な『豊かな社会』を構築するためには、より過酷な環境下においても耐え得る革命的な材料が求められます。それを可能にするのがFeを中心とする金属材料です。その高性能化、高機能化を実現する決め手は、原子レベルからの組織設計にあります。
当研究室では「ものを作る」技術と「組織を観察する目(力)」を重視し、金属学の王道である平衡論(状態図)、速度論(相変態)、結晶学(構造解析)、強度学(変形機構)に基づいて、学理の追求と工学への応用を念頭に、既存の常識を打ち破る新たな耐熱金属材料の創出のための組織設計指導原理の構築に取り組んでいます(図1参照)。
発電効率の向上には、タービンに送る蒸気(ガス)温度を高めればよいことは物理の法則です。問題はそれに耐えうる材料の創生です。例えば、現状の汽力発電(図3)の蒸気温度は約600 ℃であり、ボイラーやタービンにはフェライトと呼ばれるbcc構造のα – Feが用いられます。このFeの適用限界は650 ℃と言われています。現在、これを700 ℃以上、且つ、10年以上壊れずに強度を保つ材料開発が日欧米で行われており、その候補合金は全てNi基合金です。しかし、当研究室ではこれをFe基で実現する、しかも800 ℃という世界で誰も行っていない挑戦的テーマに取り組んでいます。Feの面白さは、温度及び元素の添加によってその結晶構造が変わり(相変態)、組織を自在に制御できる点にあります。我々はオーステナイトと呼ばれるfcc構造のγ – Feを利用して世界初の金属間化合物を強化相とする超耐熱鋼の設計指導原理を構築し、粒界析出強化という新たな強化手法を用いてNi基の匹敵するクリープ強度がFe基においても得られことを実証しています。また、α – Feにおいても同様に金属間化合物の析出及び相変態を利用し、従来とは全く異なる組織設計により高温化・長寿命化を目指しています。
ジェットエンジン(図4)のタービンや高圧圧縮機動翼には現在Ni基合金が使われています。航空機は2030年までに約35,000 機の製造が見込まれ、高推重比化・環境負荷低減化は喫緊の課題であり、より軽量な高強度材料が求められています。当研究室では、Ni基合金の高強度化に向けた全く新しい組織設計指導原理の構築はもとより、新たな材料創生を行っています。それがTiAl基合金です。TiAlは、比重がNi基合金の約半分のL10型構造の高比強度金属間化合物材料であり、今後設計される全てのエンジンへの利用が確実なホットな新材料です。我々は世界で初めてその鍛造性を実証し、鍛造TiAl基合金の組織設計指導原理を構築しました。その原理に基づいて低圧タービンや高圧圧縮機動翼に利用すべく、高温でのさらなる高強度化と高靱性化に取組んでいます。
材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 竹山雅夫
E-mail : takeyama@mtl.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3138
講師 小林覚
E-mail : kobayashi.s.be@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3585
※この内容は2016年4月発行の材料系 金属分野パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。