材料系 News

木村研究室―研究室紹介 #13―

地球環境に優しく金属材料の機能特性をデザインする

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2016.10.11

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、地球環境に優しく金属材料の機能特性をデザインする、木村好里研究室です。

准教授 木村好里

金属分野
エネルギーコース
研究室:すずかけ台キャンパス・J3棟1516号室
准教授 木村好里

研究分野 熱電材料 / 耐熱合金 / 結晶構造・組織制御 / 金属
キーワード 廃熱から発電~熱電材料の性能と耐久性向上、強さ・しなやかさ~耐熱合金と鉄鋼材料の強靭化、状態図に基づく組織と格子欠陥制御による材料設計
Webサイト 木村研究室別窓
木村好里 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

はじめに

エネルギー変換材料としての金属材料にフォーカスして、材料科学と工学の分野から地球環境保全に貢献できることを研究室メンバーみんなで一緒に考え、真剣かつ楽しく研究に励んでいます。木に年輪があり織物に縦糸と横糸があるように、金属材料の内部には外見からは想像できないほど複雑な「組織=微視的構造(microstructure)」があります(下図:研究例)。原子が規則的に整然と並ぶ結晶構造には乱れた不完全部分として種々の格子欠陥や相界面がたくさん含まれており、組織を構成しています。機能特性に優れた金属材料を設計して創製するためには組織、相界面、格子欠陥を巧みに制御することが大切です。材料の飛躍的な性能向上を目指すことはもちろん、環境低負荷に配慮した合金系の選択、省エネルギー型作製プロセスの開発にも挑戦しています。

図 【上段左から】 (a)TiNi/Sn固液界面でのHalf-Heusler TiNiSn多結晶層と単結晶facetの形成、(b)Heusler Zr(Ni,Co)2Sn母相とHalf-Heusler Zr(Ni,Co)Sn析出、(c)共析SiとFe3O4の酸化還元焼結によるSiO2分散β FeSi2複相組織、(d)強加工α Fe母相結晶粒界と粒内に析出するLaves 相 (Fe,Cr)2(Nb,Mo)、(e)E21 Co3AlC 単結晶の逆位相領域APD、(f)三形態共存の二相組織:α Co母相とκ- Co3AlC析出、共晶ラメラ、不連続析出DCPラメラ

【上段左から】(a)TiNi/Sn固液界面でのHalf-Heusler TiNiSn多結晶層と単結晶facetの形成、(b)Heusler Zr(Ni,Co)2Sn母相とHalf-Heusler Zr(Ni,Co)Sn析出、(c)共析SiとFe3O4の酸化還元焼結によるSiO2分散β FeSi2複相組織、(d)強加工α Fe母相結晶粒界と粒内に析出するLaves 相 (Fe,Cr)2(Nb,Mo)、(e)E21 Co3AlC 単結晶の逆位相領域APD、(f)三形態共存の二相組織:α Co母相とκ- Co3AlC析出、共晶ラメラ、不連続析出DCPラメラ

1. 熱電材料 ―未利用の熱を電気に直接変換―

産業活動、日常生活、自然界を通じて地球には様々な形態と規模で未利用の熱が存在します。温度差(Seebeck 効果)で発電する熱電発電は熱を電気に変換できるクリーンな技術です。有毒元素や希少元素を含まない環境に優しい熱電材料としてTiNiSnに代表されるHalf-Heusler化合物、β FeSi2やMg2Siに着目しています。例えばHalf-Heusler型規則構造の空孔サイトに元素を優先的に固溶させ、バンド構造制御によるn - p 特性変換、フォノン散乱源とする熱伝導低減を実現しています。β FeSi2 では急冷凝固や酸化還元反応焼結などの作製プロセスに工夫を重ねて組織を制御します。本格的な実用化には性能だけでなく安定性と耐久性の向上が重要です。

2. 耐熱合金・鉄鋼材料 ―強さ、しなやかさ、信頼性―

実用耐熱合金の改善や代替高融点材料の開発によりエネルギー変換効率を向上すれば、省エネルギーと環境保全に貢献できます。相反する関係にある強度と延性を組織制御により両立できれば強靱な材料が実現できます。実用Ni基超合金の強化相L12型Ni3Alと似て非なるE21型Co3AlC1-xでは、C原子を規則化させたE21'型Co3AlC0.5に結晶構造を制御して高強度と延性が両立できます。規則化に伴い形成する逆位相領域APDは変形能だけでなく磁気特性を制御する因子としても働きます。ステンレス鋼のように機能性を兼ね備えた構造材料の設計では、母相の回復再結晶と共存相の析出が競合する組織制御により機械的性質と機能性をバランスさせます。

3. 相平衡と相安定性 ―物質と材料の地図「状態図」―

金属材料の機械特性や機能特性を決定づける組織は熱処理により制御でき、一方で組織は温度と時間に依存して変化します。材料設計において、どのような組織制御が可能であるかを把握するためには、あるいは使用中の組織変化を予測するためには、物質と材料の地図である『状態図phasediagram』が貴重な情報源となります。実験で観察している現象は必ずしも平衡状態で進行せず、元素の拡散や界面を介する反応の速度によって律速されます。行き先を知るための平衡論と併せて、現象の経路や機構を理解するために速度論を考慮します。上述した熱電材料、耐熱合金、鉄鋼材料の設計、創製、作製プロセス開発のために、必要とあれば実験によって状態図を構築します。

おわりに

学生が主役となって自ら考えて研究を切り拓いていくための想像力と創造力を木村研では大切にしています。コミュニケーションという心のキャッチボールを積極的に行って、研究室における信頼の強い絆を構築できればと願っています。成功を目指して、失敗を恐れず糧にして、たくさんの経験を積みましょう。木村研というチームで仲間と一緒に充実した濃密な時間を過ごしながら成長し、社会へ、世界へ、未来へ力強く羽ばたいてください。

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

准教授 木村好里
E-mail : kimura.y.ac@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5157

※この内容は2016年4月発行の材料系 金属分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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