材料系 News
北野政明准教授、中田伸生准教授が、平成28年度東工大挑戦的研究賞を受賞しました。
北野准教授の研究は、学長特別賞も受賞しました。
挑戦的研究賞は、本学の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏の分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開又は解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するとともに、研究費の支援を行うものです。本賞を受賞した研究者からは、数多くの文部科学大臣表彰受賞者が生まれています。
強固な三重結合を有する窒素分子の活性化は困難であり、窒素と水素からアンモニアを合成する工業的プロセス(ハーバー・ボッシュ法)でも高温・高圧の反応条件が必須でありました。温和な条件下でも機能する触媒の開発が数多くなされてきましたが、ハーバー・ボッシュ法を凌駕する触媒は見いだされていませんでした。
我々は、電子を高濃度で有した無機化合物であるエレクトライドという新物質と、ルテニウムナノ粒子を組み合わせることで、温和な条件下でも作動するアンモニア合成触媒となることを見いだしました。本触媒では、エレクトライド内に含まれる電子やヒドリドイオン(H-イオン)の役割によって優れた触媒活性が発現しており、従来の触媒とは全く異なる反応メカニズムであることを明らかにし、温和な条件下でのアンモニア合成を実現する道を開拓することに成功しました。今後は、実用化を視野に入れたアンモニア合成触媒の開発や、エレクトライドを利用した新たな触媒反応にも展開していきたいと考えています。
今回の受賞の成果は、細野秀雄教授、原亨和教授のご指導のもと、多くの学生、博士研究員、技術員の方々と行ってきたものです。これまで支えてくださった全ての方々にこの場を借りて感謝いたします。本研究が、社会に貢献できるものにつながるよう今後も努力していきたいと思います。
鉄は固体状態にありながら、温度に依存して結晶構造が変化する金属であり、高温から低温に冷却する場合には、面心立方-fcc構造から体心立方-bcc構造への結晶構造変化(相変態)が生じます。とくに、冷却速度が大きい場合、マルテンサイト変態と呼ばれる相変態が発現し、これによって鉄の強度は何倍にも飛躍します。これは正に、刀匠が鍛錬した真赤な鉄を勢いよく水の中に浸漬することで強靭な刀剣を得る技法そのものであり、マルテンサイト変態は、鉄鋼材料の力学特性を高める実用的な技術なのです。受賞者は、この鉄鋼材料のマルテンサイト変態が、高温から低温だけではなく、低温から高温への加熱において生じるbcc構造からfcc構造への相変態(逆変態)でも発現することに注目し、世界に先駆けて低合金鋼でマルテンサイト逆変態を発現させることに成功しました。受賞研究では、このマルテンサイト逆変態が発現する工業的条件を探索し、鉄鋼材料の強度や靭性を大幅に改善する新たな技術の確立に臨みます。
本研究は、高木節雄先生(九州大学教授)のご指導の下、発案に至り、多くの学生・共同研究者と実施した成果です。関係者の皆様に心から御礼申し上げます。そして、今回の受賞を契機として、東京工業大学において教育・研究活動に邁進し、材料科学の発展に貢献できるように努めてまいります。