材料系 News

稲邑朋也研究室 ―研究室紹介 #1―

ミクロ組織の幾何学でマクロ物性を制御する

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2016.08.26

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、ミクロ組織の幾何学でマクロ物性を制御する、稲邑朋也研究室です。

准教授 稲邑朋也 助教 篠原百合

金属分野
材料コース
研究室:すずかけ台キャンパス・R2棟914号室
准教授 稲邑朋也 助教 篠原百合

研究分野 機能性材料 / 金属 / 形状可変材料 / エネルギーおよび医療用材料
キーワード 無拡散変態組織の構造とダイナミクス、集合組織制御、超長寿命形状記憶合金、低弾性率チタン合金
Webサイト 細田・稲邑研究室別窓
稲邑朋也 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓
篠原百合 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

はじめに

日経サイエンス 2013年11月号掲載の研究紹介

図1 日経サイエンス 2013年11月号掲載の研究紹介

金属材料は、ナノ~マクロスケールに渡る、実に多様な下部構造(組織)を持っています。組織は、同じ合金系であっても、組成や加工熱処理条件に応じて大きく変化し、材料特性を決定づけます。合金設計と組織制御は、新合金開発の両輪といっても過言ではありません。

稲邑研究室では、主に形状記憶合金を対象として、無拡散相変態のダイナミクスや、それに関わる微細組織・欠陥構造の形成過程にみられる普遍的な側面を抽出して体系化してゆく基礎研究を結晶学・幾何学理論と各種顕微技術を駆使して行っています。これをもとに、対象とする材料の持つポテンシャルを最大限に引き出す原理やプロセスの研究を行います。さらにそれらを活かして、多様な新合金の開発や高性能化などの応用研究を、合金設計を専門とする、細田研究室と連携して進めています(細田研究室と一体で運営しています)。

研究テーマについて

1. ドメイン組織の欠陥構造とトポロジー

形状記憶合金は、変形しても加熱すると元の形に戻ったり(形状記憶効果)、ゴムの様にしなやかに変形できるといった(超弾性効果)、特異な力学特性を示します。形状記憶合金を駆動させると、マルテンサイト相変態により形成するドメインが変換し合い、その過程で内部摩擦や疲労損傷が発生します.稲邑研究室は、ドメイン組織に隠然と存在する「ねじれ」を発見し、これに基づくドメイン制御原理を見いだしており、形状記憶合金の応答速度や耐久性を格段に向上させる基本原理を明らかにしつつあります。

Ti-Nb-Al合金のマルテンサイト相が呈するドメイン構造

図2 Ti-Nb-Al合金のマルテンサイト相が呈するドメイン構造

Ti-Au合金のtwin-within-twin構造

図3 Ti-Au合金のtwin-within-twin構造

2. 超長寿命形状記憶合金の開発

ドメイン間のねじれが解消される格子定数条件(立方晶—単斜晶変態)

図4 ドメイン間のねじれが解消される格子定数条件(立方晶—単斜晶変態)

チタン系形状記憶合金や、既に実用化されているニチノール合金(Ti-Ni)をベースに、耐久性を飛躍的に向上させた新合金の開発を、上記のドメイン組織制御原理を応用して行っています。これによって廃熱利用技術、低侵襲医療機器、磁場アクチュエータ、マイクロアクチュエータ技術などの発展に貢献します。

3. 医療用チタン合金の集合組織制御と高機能化

強圧延したTi-Mo-Al-Zr超弾性合金の再結晶開始15秒後の結晶方位分布関数

図5 強圧延したTi-Mo-Al-Zr超弾性合金の再結晶開始15秒後の結晶方位分布関数

回復・再結晶を利用して、結晶粒の配向方位を制御し、生体用形状記憶・超弾性合金の機能性を最大限に引き出して、実用レベルの性能を得るための研究を行っています。また骨代替用βチタン合金を極限まで低弾性率化させる為の集合組織形成プロセスも研究しています。

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

准教授 稲邑朋也
E-mail : inamura.t.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5058

※この内容は2016年4月発行の材料系 金属分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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