地球惑星科学系 News
―昔の、そして今の惑星環境や文明に与える脅威―
国立天文台 ALMAプロジェクトの行方宏介 日本学術振興会特別研究員、国立天文台ハワイ観測所岡山分室の前原裕之 助教、東京工業大学理学院地球惑星科学系(佐藤研究室)の野津湧太 日本学術振興会特別研究員 (米国コロラド大学ボルダー校にて在外研究中)らの研究グループは、京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡をはじめとする複数の地上望遠鏡、衛星望遠鏡を連携させて、若い太陽型星「りゅう座EK星」の長時間の監視観測を行いました。
その結果、太陽型星では初めてとなるスーパーフレア現象(最大級の太陽フレアの10倍以上という膨大なエネルギーを解放する爆発現象)の可視光線での分光観測に成功しました。
このデータを、京都大学飛騨天文台で観測された太陽フレアに伴うフィラメント噴出のデータと比較したところ、りゅう座EK星のスーパーフレアに伴って巨大なフィラメント(温度約1万度のプラズマ)が噴出していたことが明らかになりました。しかも驚くべきことに、今回の現象で放出されたフィラメントの質量は、太陽で起こった史上最大級の質量放出の10倍以上であり、秒速約500キロメートルもの速度に達する現象だったことが判明しました。
今回の成果は、若い太陽が、現在の太陽(あるいは太陽と同程度年齢の恒星)よりも、その周りを回る惑星の環境に非常に大きく影響を与えていた可能性を示唆しています。
この研究成果は、K. Namekata et al. “Probable detection of an eruptive filament from a superflare on a solar-type star” として、英国の天文学専門誌『ネイチャー・アストロノミー』に2021年12月9日付で掲載されました。