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小惑星リュウグウの粒子が秘める「宇宙の謎」に迫る

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2025.06.04

我々が暮らす太陽系は約46億年前に誕生したと推測されるが、その形成過程は多くの謎に包まれている。太陽系や地球はどのように生まれ、進化したのか。そして、生命はいかにして誕生したのか。この壮大な問いを解き明かす鍵になるのが、隕石をはじめとする地球外物質だ。小惑星などに由来する隕石は、初期太陽系の情報を今に伝える、いわば「太陽系の化石」である。これらの隕石の化学組成や同位体組成を分析[用語1]すれば、その母天体がいつ、どのように形成され、いかなる変化をたどってきたのかを突き止めることができ、太陽系の成り立ちに迫る手掛かりが得られるのだ。

これまで地球に飛来した約7万個の隕石は、世界中の研究者たちの手で分析が進められてきた。だが、隕石には「母天体の正確な特定が難しい」「大気圏突入時の熱による影響や地球環境による汚染を受ける」といった課題もある。これを解決する方法が、宇宙探査により天体から直接試料を採取する「サンプルリターン」だ。代表例は、アメリカ航空宇宙局(NASA)のアポロ計画による「月の石」の採取。日本では2010年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ」が、度重なるトラブルに見舞われながらも、S型小惑星[用語2]イトカワから微粒子を持ち帰ることに成功。小惑星からのサンプルリターンを世界で初めて成し遂げ、大きな話題を呼んだ。

その後継機である「はやぶさ2」が宇宙へ旅立ったのは2014年。探査技術の確立が目的であり工学ミッションの性格が強かった初代はやぶさに対し、はやぶさ2に課せられた任務は、太陽系の進化や水、有機物の起源に迫ること。太陽系形成初期の姿を留める始原的な天体であり、水や有機物を含むC型小惑星[用語2]リュウグウで約5.4gの試料を採取、2020年12月に地球に帰還した。人類が初めてC型小惑星から直接入手した試料は、果たして何を物語るのか。太陽系や地球の歴史をひもとく糸口はあるのか。その分析結果に、世界から大きな期待が寄せられている。

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