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東工大生ら主催 路上生活者調査「東京ストリートカウント」 ―五輪契機に優しい都市に―

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2016.05.31

ARCH(アーチ。Advocacy and Research Centre for Homelessnessの略称)は1月13日~15日の3日間、夜間の路上生活者人口調査「東京ストリートカウント」を東京都内、渋谷・新宿・豊島の3区で実施しました。ARCHは、東京工業大学環境・社会理工学院で都市政策やコミュニティデザインを研究する土肥研究室のメンバーや卒業生、NPOメンバーからなる、ホームレス問題の研究・アドボカシー(政策提言)を行うグループです。調査期間中は、真冬の深夜にも関わらず3日間でのべ111名のボランティアの協力を得て、終電後の各区内を徒歩や車などで周り、路上生活者の人数を調査しました。

終電後の駅に集まった各日40名程のボランティアの皆さん

終電後の駅に集まった各日40名程のボランティアの皆さん

ストリートカウントとは

3~4人一班となり、地図や調査シートを持ちながら2時間程度担当エリアを隈なく歩いて調査

3~4人一班となり、地図や調査シートを持ちながら2時間程度担当エリアを隈なく歩いて調査

主催者の1人、本学環境・社会理工学院博士後期課程の北畠拓也さんは、過去にオーストラリアや英国にてホームレス政策の調査を行った際に、現地での「street count(ストリートカウント)」調査に参加した経験があり、それらを参考にしながら今回東京ではじめて市民参加型のストリートカウント調査を実施しました。

路上生活者人口に関する調査は行政も実施しており、東京都は年に2回「路上生活者概数調査」として都内における路上生活者数を把握するために道路・公園・河川敷・駅舎等を調査しています。しかし東京都による調査の時間帯は昼間であるため、河川などに定住している路上生活者の数を把握することはできても、夜間の、特に終電以降に路上に出てくる人々については十分把握できていない、という指摘がなされていました。そのため、東京都による概数調査を補完し、より実態に即した政策や支援活動を行うための一助となるよう、夜間の路上生活者人口を調べました。

その結果、「東京ストリートカウント」で対象とした3区では671名が夜間に路上生活をしていることが確認され、同時期に東京都が昼間に実施した調査結果(3区:239名)の約2.8倍にものぼることがわかりました。

「東京ストリートカウント公開報告会」を開催

4月10日に実施した公開報告会の様子

4月10日に実施した公開報告会の様子

4月10日、ARCHは「東京ストリートカウント公開報告会」を開催しました。報告会では、調査結果と分析・推計を発表するとともに、東京の現状や2020年東京オリンピック・パラリンピックへの影響を踏まえ、ストリートカウントから見えてくることについて述べ、参加者と意見交換を行いました。約90名の参加があり、その模様はTV、新聞、ラジオ等メディアでも取り上げられました。

公開報告会での参加者との質疑応答や意見交換の様子

公開報告会での参加者との質疑応答や意見交換の様子

公開報告会での参加者との質疑応答や意見交換の様子

なぜ五輪✕ホームレス問題なのか

東京は2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市です。過去、諸外国の開催都市では、五輪に際する路上生活者の公共空間からの追い立てや、旅行客のために不安定な居住状態にある人が低額の宿泊施設にいられなくなるなどの影響が報告されており、東京でも同様の懸念がなされています。一方で、五輪という市民の注目が集まる機会を好機と捉え、ホームレス・セクター全体で後の社会まで続く仕組みや体制などを遺した都市もありました。

日本では主に福祉分野の社会問題として扱われることが多いホームレス問題ですが、実際には就労や住宅、保健医療、或いは公共空間管理、地域住民など様々な分野や立場の人々が関わる都市の問題です。ARCHはそうした視点から、東京が2020年オリンピック・パラリンピックを契機として多様な人々が見守ったり支え合ったりする優しい都市になることを目指して調査研究・政策提言を行っています。

「東京ストリートカウント」の意義と今後の展開

今回実施した「東京ストリートカウント」はそうした目標への第1歩でもあります。実態調査としての側面に加え、多くの市民ボランティアの協力を得るという特徴がある調査であるため、市民にホームレス問題について考えてもらう契機としての意義があります。

実際に今回の調査に参加したボランティアの中には、はじめて路上生活の状況を目の当たりにしたという方も多く、「真冬の寒空の下にこれほど多くの人が路上にいて驚いた」「終電後はいつもと別の街のように感じた」という声が聞かれました。自分たちが住む街にこれだけ多くの人が路上で生活する状況にあるということを知り、心配したり考える人が増えていくことで、多様な人々が見守ったり支え合ったりする「優しい都市」に近付くことを期待しています。

「東京ストリートカウント」は今後も継続的に、対象地域を拡大していきながら行っていきます。興味のある方は、ARCHのウェブサイトをご覧ください。

環境・社会理工学院

環境・社会理工学院 ―地域から国土に至る環境を構築―
2016年4月に新たに発足した環境・社会理工学院について紹介します。

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北畠拓也 環境・社会理工学院博士後期課程/ARCH

E-mail : arch.cd.office@gmail.com

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