未来

多様性の中に潜む可能性を求めて

フランス国立科学研究センター(CNRS)ヒト遺伝学研究所(IGH)
Epigenetic Chromatin Regulation Laboratory
グループリーダー

望月 一史 さん

望月 一史さん

現在の仕事について教えてください。
フランス最大の研究機関CNRSの研究ディレクターとして、南仏モンペリエにあるヒト遺伝学研究所(IGH)で研究室を主宰しています。私たちのゲノムの大部分は、進化の過程で蓄積されたトランスポゾンやウイルスなどの外来因子に由来するDNAによって占められており、それらからの遺伝子発現を適切に抑制することが、生物が安定して子孫を残していくことに重要であると考えられています。私の研究室では、細胞が自身のDNAと外来因子に由来するDNAをどのように見分け、後者をどのように抑制するのかを、テトラヒメナという単細胞生物を用いて研究しています。
東工大での経験や学びは、いまの仕事にどう活きていますか?
生命理工学部及び生命理工学研究科では、古典的な生物学から、分子生物学、有機化学、物理学、基礎的なプログラミングに至る広範な教育を受けました。当時は自分には不要と思える内容もありましたが、多様な分野の知識を結集して問題にアプローチすることが求められる現代の生物学研究の世界で生き残っていく上で、東工大で学んだ様々な分野の方法論や基礎知識に助けられています。また、卒業研究や修士過程の研究室生活で感じた、まだ誰も知らないことを世界で最初に解き明かそうと努力する喜びが、今でも研究者を続ける原動力となっています。
今後の目標を教えてください。
過去30年ほどの生物学は、限られたモデル生物の研究を極めることで発展してきました。一方で、生物は、様々な環境に適応するため、我々の思いもよらない生存戦略を進化させており、これまであまり研究されていない多様な生物を研究することで、常識では予期できない発見が得られると期待できます。また、多様な文化的背景を持つ人間が集まる研究環境に身を置くことは、一人の想像力を超えた、奇想天外なアイデアを生み出す基盤となります。世界は、残念ながら人種的多様性を排除する方向に少しずつ向かっているようですが、ヨーロッパの片隅で、ささやかながら、生物と人間両方の多様性を生かした、ユニークな研究を進めていきたいと思います。
最後に、東工大を目指す人に一言お願いします。
理系の職業は、分野外の人に自身の仕事の成果を分かり易く説明する文章力と話力を必要とします。加えて、研究者を目指すのであれば、それを英語で行う能力が求められます。文系科目が得意なあなた、実は、あなたは理系の世界で活躍できる素養があります。自分の可能性を自分で限定せずに、東工大を目指してください。文系科目が不得意なあなた、文系科目も頑張ってください。

もちづき・かずふみ(静岡県出身)

1991年
東京工業大学 第7類 入学
1997年
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 バイオテクノロジー専攻 修士課程 修了
2000年
総合研究大学院大学 生命科学研究科 遺伝学専攻 博士課程 修了
2001年
ロチェスター大学(アメリカ) 博士研究員
2006年
オーストリア科学アカデミー 分子生物工学研究所(IMBA) グループリーダー
2016年
フランス国立科学研究センター(CNRS)研究ディレクター、ヒト遺伝学研究所(IGH)グループリーダー

※記事の内容は取材当時のものです

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