未来

アジア発グローバルリーダーシップを担う研究者をめざして

アカデミアシニカ(中央研究院)
植物及微生物学研究所
副研究員

中村 友輝 さん

中村 友輝さん

現在の仕事について教えてください。
台湾を代表する研究機関アカデミアシニカで研究室を主宰しています。植物を主な材料に、脂質が果たす様々な役割を研究しています。油と聞くと貯蔵物質を連想しますが、たとえば開花を制御するなど、思いもよらない機能を持っていることが分かってきました。台湾、日本および欧州政府から獲得した研究資金をもとに6ヵ国のメンバーで構成される研究チームを統括し、日本や他国との国際共同研究を主導しながら、先駆的な成果を発信しています。大きな責任のある、大変にやりがいのある仕事です。
東工大での経験や学びは、いまの仕事にどう活きていますか?
理系文系を問わず、ユニークな教授陣から受けた特徴ある講義や様々な国からの留学生との交流から世界観が広がりました。バックパッカーをしながら異国への興味を募らせ、研究室では指導教官から研究者という立場で国際的な職務に就く意義と目標を教わりました。東工大の学生は概して実直で、友人たちの将来に対する真摯な姿勢に学ぶことも多くありました。
今後の目標を教えてください。
研究分野で今後ますます台頭するアジアで、アジア主導の国際的な研究を推進するリーダーシップある日本人研究者を目指したいと思います。こうした人材になるには、単に外国語に堪能になるだけでは足りず、言語の背景にある文化や伝統をよく学び、各国の人たちと腹を割って話し合える土台つくりが大切でしょう。私は研究室では英語ですが、研究所の業務は華語(標準中国語)を使います。東工大に入学したころは外国人に大学正門の場所を尋ねられても答えられませんでしたが、強い志あれば「事竟に成る」ものだと知りました。「郷に入っては郷に従え」を念頭に、その国の言葉で仕事をしてその国になじみ、自身の人材価値を高めていきたいものです。
最後に、東工大を目指す人に一言お願いします。
私は理系科目が苦手で、一浪の末に後期試験で何とか東工大に合格しました。東工大での経験がなかったら、科学者を生業とすることなど想像もできなかったでしょう。また、留学生、日本人学生を問わず、私のまわりにいた東工大の学生はみな実直でした。多様な世界を知り、自ら将来を切り拓く力の源となる大学生活を送ることができた母校を、これから目指す後輩の皆さんに大きなエールとともにお薦めしたいと思います。

なかむら・ゆうき(東京都出身)

2004年
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 生体システム専攻 修士課程 修了
2007年
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 生体システム専攻 博士課程 修了
2007 - 2009年
日本学術振興会海外特別研究員(派遣先:テマセック生命科学研究所 シンガポール)
2009 - 2010年
シンガポール国立大学 リサーチフェロー
2010 - 2011年
アレクサンダー・フォン・フンボルト財団 フェロー(派遣先:マックスプランク植物分子育種学研究所 ドイツ)
2011 - 2015年
アカデミアシニカ植物及微生物学研究所(台湾) 助研究員(principal investigator)
2011 - 2014年
科学技術振興機構 さきがけ研究者(兼任)
2014 - 2015年
国立中興大学 客員助理教授(兼任:台湾)
2015年 - 現在
アカデミアシニカ 植物及微生物学研究所(台湾) 副研究員
国立中興大学 客員副教授(兼任:台湾)
ヨーロッパ分子生物学機構(EMBO)Young Investigator(兼任:ドイツ)

※記事の内容は取材当時のものです

ページのトップへ

CLOSE

※ 東工大の教育に関連するWebサイトの構成です。

CLOSE