概要
- 講師
- 内藤 哲 博士
(北海道大学 大学院農学研究院/大学院生命科学院 教授)
- 演題
- リボソームを舞台とした細胞内栄養応答
- 要旨
- かつてリボソームはmRNAに書き込まれた遺伝情報を忠実にタンパク質に翻訳するための装置であると考えられていたが、そうではなく、細胞内の状態を検知して、翻訳を止めたり、さらには翻訳中のmRNAを分解したりする高度な制御装置である。植物でメチオニンの生合成を担うシスタチオニンγ-シンターゼをコードするCGS1遺伝子のmRNAは、メチオニンの代謝産物であるS-アデノシルメチオニン(SAM)に応答して翻訳が一時停止し、これと共役してmRNAが分解される。この制御にはCGS1がコードする、MTO1領域と名付けた十数アミノ酸の領域が必要であり、SAM存在下ではMTO1領域を翻訳した直後にリボソームの一時停止とCGS1 mRNA分解が誘導される。リボソームで翻訳された新生ペプチドはリボソームの大サブユニットを貫く「出口トンネル」を通って出てくるが、MTO1新生ペプチドは、この出口トンネル内で作用している。MTO1新生ペプチドが如何にしてSAMの検知に関わるのか、リボソームを舞台とした遺伝子発現制御システムを概観しつつ、我々の研究の現状を紹介する。
参考:「化学と生物」54: 191-196 (2016)
植物における翻訳時の新生ポリペプチド鎖による遺伝子発現制御でユニークな研究を展開している北海道大学の内藤 哲博士に大学院集中講義(生命理工学フロンティア第四B)の一環でセミナーをしていただけることになりました。
皆様どうぞご参加ください。
細胞制御工学研究センターコロキウム 0031 ポスター