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すずかけ台キャンパス S2棟 2階 会議室
生体の器官が機能を発揮するには、細胞集団の秩序だった構築が前提となる。近年、一見秩序だった均一な細胞集団にも、細胞状態のゆらぎや確率的な細胞系譜といった著しい不均一性が存在し、フレキシブルな組織の構築・維持に寄与する現象が見つかっている。しかし細胞の動的不均一性が生ずる機構やその役割、普遍性や多様性、そしてこのような動的不均一性と秩序の関係を研究する学問分野は未成熟である。
ショウジョウバエの神経幹細胞は線虫の卵割と共に極性を持った細胞の非対称分裂の典型的なモデルとして、細胞極性と非対称細胞分裂の分子機構の理解を先導してきた。そこでは、細胞の極性軸と分裂装置の方向の精密な制御によって、細胞分裂の対称性と非対称性が決定される分子機構が明らかにされてきた。しかし、Par-複合体による細胞極性が自律的に形成される仕組みは本質的な問題であるにも関わらず、未だ明快な答えはない。最近我々が細胞極性を再構成する試みの過程で、均一な極性分子の分布から不均一性が生じるメカニズムに関してヒントが得られたので紹介したい。
他方、哺乳類の神経幹細胞はダイナミックな核のエレベーター運動を行いながらニューロンを産生することによって多層上皮構造を形成するが、ニューロンを産生する幹細胞の非対称分裂はショウジョウバエ等で確立されたモデルとは大きく異なることを明らかにしてきた。細胞分裂軸と極性方向はほぼ直交しており、そのゆらぎはむしろ、神経幹細胞の移動を生じる分裂モードとなることが判明し、とりわけ、高度な脳の形成過程で、多様な神経幹細胞からなる不均一な集団を生じる原因であることが明らかになってきた。このような不均一で動的な幹細胞集団が紡ぎ出す一見ランダムな細胞系譜がいかにして秩序だった多細胞構築を生み出してゆくのか、そこに介在する隠れた規則性の理解は今後の大きな課題である。
皆様どうぞご参加ください。
更新日:2017.10.20