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新材料設計指針により世界最高の臨界電流密度を有する鉄系超伝導薄膜を創製

銅酸化物高温超伝導薄膜に匹敵する磁場中臨界電流密度を達成

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2024.07.24

図1 新材料設計指針により飛躍的に増大した超伝導電流(臨界電流)がSmFeAsO1–xHx薄膜内を流れる様子

図1. 新材料設計指針により飛躍的に増大した超伝導電流(臨界電流)がSmFeAsO1–xHx薄膜内を流れる様子

東京工業大学の細野秀雄栄誉教授(国際先駆研究機構 元素戦略MDX研究センター 特命教授)、科学技術創成研究院の平松秀典教授(材料コース 主担当)らは、成蹊大学大学院理工学研究科の三浦正志教授と共に、図1に示す新材料設計指針である『キャリア密度[用語1]制御と磁束ピン止め点[用語2]制御の融合』により鉄系超伝導材料SmFeAsO1–xHx[用語3]薄膜を創製し、液体ヘリウム沸点温度(−269度)で25テスラ[用語4]の高磁場下まで鉄系超伝導材料の中で最も高い臨界電流密度を達成。また、本材料設計指針により種類の異なる超伝導材料においても世界最高レベルの臨界電流密度を達成し、幅広い超伝導材料への本材料設計指針の有効性を確認しました。

本研究成果は、英国科学誌Nature姉妹論文誌「Nature Materials」(オンライン:2024年7月18日午後6時(日本時間))に掲載されました。

  • 用語説明

[用語1] キャリア密度 : 体積あたりの電荷キャリアの個数である。鉄系超伝導SmFeAs1–xOxのキャリアは、電子(物質中で負の電荷を運ぶ担体として振る舞う)である。一方、銅酸化物高温超伝導YBa2Cu3Oyや鉄系超伝導BaFe2(As1–xPx)2およびFeSe1–xTexにおけるキャリアは、ホール(物質中で正の電荷を運ぶ担体として振る舞う)である。

[用語2] 磁束ピン止め点 : 磁場下の超伝導体内には、量子化された磁束(量子化磁束)が侵入する。この量子化磁束は、超伝導に流れる超伝導電流と磁場によるローレンツ力(電磁場中で運動する荷電粒子が受ける力)を受け、超伝導体内を運動するため、この運動により超伝導電流が流れにくくなる。そこで、超伝導電流向上を目的に、量子化磁束の運動を抑制(ピン止め)するために導入する非超伝導相のことを磁束ピン止め点とよぶ。

[用語3] 鉄系超伝導材料SmFeAsO1–xHx : 2008年に東京工業大学の細野秀雄栄誉教授のグループにより発見された鉄を含む一連の超伝導体群(鉄系超伝導体)の一つでLnFeAsO(Lnはランタノイド)を母相とした超伝導体。SmFeAsOの最高臨界温度は、55ケルビン(摂氏-218度)に達し、これは銅酸化物系を除くと常圧下での超伝導材料としては最も高い値である。

[用語4] テスラ : 磁場(磁束密度)の強さを表し、Tで表記される。


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