材料系 News
東京工業大学 物質理工学院 材料系の大井梓助教(材料コース 主担当)が、「2024年日本鉄鋼協会 研究奨励賞」を受賞しました。
日本鉄鋼協会によると、研究奨励賞は「鉄鋼及びその関連領域において優れた研究実績を挙げている若手研究・技術者」に授与されるものです。3月13日に日本鉄鋼協会2024年春季(第187回)講演大会で贈呈式が行われました。
日本鉄鋼協会が発表した受賞テーマと理由は次の通りです。
受賞者は、”鉄鋼材料の様々な環境下における腐食機構解明”に関する研究に従事している。近年高まる省資源・省エネルギーの要求に応えるために、腐食機構解明の基づく”高耐久性鉄鋼材料の開発”や”適切な鉄鋼材料の腐食しろの提案”など、電気化学的アプローチにより成果を挙げている。受賞者の特出した業績として、「土壌腐食におよぼす環境因子の影響に関する研究」が挙げられる。土壌環境はその複雑さから腐食におよぼす環境因子が明らかではなかったが、非破壊測定が可能な電気化学測定法で鉄鋼材料の腐食モニタリングを実施し、「土壌粒径・埋設深度・pHの影響は少なく、定常状態で腐食速度が約10 μm/年であること」を見出した。また、先に挙げた環境因子と比較し、「土壌含水率は腐食速度に著しく影響し、一定含水率(90%)で約300 μm/年と極めて高い速度になること」を明らかにした。腐食速度の定量評価により、その土地の土壌特性に応じた鉄鋼材料の腐食しろ設計となるため、省資源化への寄与が大きく見込まれる。現在は、本会の研究助成を受け、含水率が変動する環境での腐食速度モニタリングと挑戦的なテーマに取り組んでいる。これら一連の研究は、”土壌中での鉄鋼材料の腐食速度の定量に基づく合理的な腐食しろ設計”という産業的応用面もさることながら、”土壌中における鉄鋼材料の腐食機構解明”にも繋がる学術面でも優れた研究内容である。
この度、日本鉄鋼協会研究奨励賞を受賞させていただき、大変光栄に存じます。
研究をご指導いただいた先生方、ならびに実験を共に進めてくださった学生の皆様に深く感謝申し上げます。
本研究は、「鉄鋼材料の土壌腐食に及ぼす環境因子の影響を非破壊で電気化学測定に基づき評価」するものであり、鉄鋼材料の腐食機構・寿命評価に基づく省資源化に関する基礎研究が評価されました。現在も日本鉄鋼協会にご支援頂きながら応用研究を進めており、鉄鋼材料の長寿命化を目指して引き続き研究に邁進してまいります。また、研究を通して教育活動にも一層努めてまいります。
※ 4月23日 12:00 研究者詳細情報ページへのリンクを追加しました。