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東京工業大学の教職員4名および本学学位取得者1名が2019年12月12日、公益財団法人井上科学振興財団(以下、井上財団)の第36回井上学術賞・井上研究奨励賞を受賞しました。
井上学術賞は、自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた50歳未満(申込締切日時点)の研究者に対して授与されるもので、賞状および金メダル、副賞200万円が贈呈されます。今回は、関係する38学会および井上財団の元選考委員や井上学術賞の過去の受賞者など155名に候補者の推薦依頼がなされ、32件の推薦を受け、選考委員会による選考を経て5件が採択されました。
井上研究奨励賞は、理学、医学、薬学、工学、農学等の分野で過去3年間に博士の学位を取得した37歳未満(申込締切日時点)の研究者のうち、優れた博士論文を提出した若手研究者に対して授与されるもので、賞状および銅メダル、副賞50万円が贈呈されます。今回は、関係242大学に候補者の推薦を依頼したうち38大学から133件の推薦があり、選考委員会における選考を経て40件が採択されました。
贈呈式は2020年2月4日(火)に行われます。
上記の賞を受賞した東工大関係者は以下のとおりです。
井上学術賞の受賞が決まり、大変嬉しく光栄に思います。
受賞内容の「トポロジカル物質科学の開拓」は、私が東京工業大学に着任して独立した研究室を主宰するようになってから始めた研究です。
まさに東工大で花を咲かせたテーマですので、喜びと感慨もひとしおです。
現時点の成果がまだまだ開花の段階であると思ってもらえるように、これからも学生さんたちや仲間の方たちと共に、楽しみながら研究を追求していきたいと思っています。
ベンゼン環に代表される芳香族性は、有機化学の根幹をなす概念の一つです。本研究では、高い塩基性・求核性を有する窒素原子の反応を足掛かりとして、外部刺激により芳香族性を制御することができる、新たなπ共役分子を開発しました。これらの分子は、透過性の高い近赤外領域において効率的な光吸収・発光を示すことから、バイオイメージングや有機薄膜太陽電池など、生命科学・物質科学への応用が期待できます。この度、このような名誉ある賞を頂きまして大変光栄に思っております。学部から博士課程まで6年間、多大なご支援、ご指導を賜りました東京大学 内山真伸 教授、理化学研究所 村中厚哉 専任研究員をはじめ、共同研究者の皆様および研究室の方々に心より感謝いたします。本受賞を励みとして、今後もよりいっそう研究に精進する所存です。
このたびは、このような栄誉ある賞をいただけることになり、大変光栄です。
この10年でスマートフォンが爆発的に普及し、インターネットは私たちの生活になくてはならないものとなりました。有線/無線の通信速度が向上し、世界のインターネットトラフィックは月間100エクサバイトを超えてなお増大し続けています。このような流れは、いわゆるIoTの進展によっていっそう進むと考えられています。例えば自動運転の分野では、従来の地図データに歩行者や路面状況等のリアルタイムな情報を付加したダイナミックマップと呼ばれる技術の整備が進んでおり、多数のセンサや車両がネットワークを介して高度に連携する未来が近づいてきています。
億単位のデバイスが柔軟に情報交換をしながら連携するためにはどうしたらよいか…。博士後期課程では、そうしたIoTの「規模」の問題を解決すべく研究に取り組みました。特に、情報交換を担うメッセージングサーバにおけるスケーラビリティに着目し、多数のサーバで適切に処理を分担することで、より多くのデバイスが素早く情報交換を行える技術の実現を目指して研究を行いました。
ご指導いただきました首藤一幸准教授(本学 情報理工学院 数理・計算科学系)をはじめ、審査員の先生方、また議論させていただいたNTT未来ねっと研究所の皆様に、心より感謝申し上げます。本受賞を励みに、今後も研究活動に鋭意取り組んでまいります。
多孔性金属錯体は金属イオンと有機配位子の自己集合により構築される多孔性材料であり、高い水吸着性を有することが知られております。本論文では、多孔性金属錯体に吸着された水分子が、バルク状態の水とは異なる物理的・化学的性質を示すことに着目し、その特異な水分子の反応性を理解することを目指しました。その目的の実現のために、高い触媒反応性を有する金属ナノ粒子に着目し、金属ナノ粒子と多孔性金属錯体が複合化された新たな評価物質系の構築を行いました。これにより、多孔性金属錯体に吸着された水分子は水性ガスシフト反応性を向上させる高活性な水として存在することを明らかにしました。さらに、多孔性金属錯体の細孔環境を適切にデザインすれば、水分子の反応性を系統的に制御できることも見出しました。
博士後期課程においてご指導いただきました京都大学の北川宏教授、小林浩和准教授をはじめ、共同研究者の皆様および研究生活を支えてくださった方々に心より御礼申し上げます。本受賞を励みとして、我が国の学術研究の発展に貢献出来るように、より一層研究活動に邁進していく所存です。
細胞内小器官である小胞体の一部がオートファジーで分解されていく現象は10年以上前に報告されていましたが、その詳細は不明でした。本研究では、小胞体の分解シグナルとして働く2つのタンパク質を同定し、その分解のメカニズムを明らかにすることが出来ました。また同定したタンパク質の一つを介して、細胞核の一部がオートファジーで分解されるという予想外の発見もありました。本研究にあたり、ご指導頂きました中戸川仁先生(東工大 生命理工学院 生命理工学系 准教授)および大隅良典先生(東工大 栄誉教授)、また共同研究者の皆様、研究を支えて頂きました研究室のメンバーに深く感謝申し上げます。