材料系 News
先進無機材料分野の発展と次世代人材の育成を担う
材料系では「金属」、「有機材料」、「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。
今回は、先進無機材料分野の発展と次世代人材の育成を担う「無機材料分野」についてご紹介します。
東工大材料系無機フォーカス長 中島章
今から約20年前、米国留学中にインド人の友人に言われたことがある。「材料の研究は日本かアメリカでしかできない。俺は日本語ができないからアメリカに来たんだ。」日本は材料の合成技術、評価技術、応用技術とそれらに関係する産業分野が世界でも類を見ないほどバランスよく成長している。米国の大学でも材料に関する各種の合成装置、分析装置は、ほとんどが日本製のものであった。日本の材料研究の環境は、大学、産業界とも間違いなく世界のトップレベルにある。日本で材料の勉強をすること=世界のトップで材料の勉強をすること、になるのだ。
無機材料分野ではセラミックスを中心に材料科学を広く取り扱う。君達はセラミックスが無限の可能性があることを知っているだろうか?セラミックスは構成元素の種類、結晶構造、化学構造が多種多様にある。一つの元素に対しても酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物等があり、それらが元素の価数に応じて数種類の状態を取れる。そして同じ組成でも数種類の異なる結晶構造を持つのである。これからもセラミックスが如何に広範な多様性を持つかがわかるだろう。
但し、今やあらゆる産業に不可欠なセラミックスにも拘わらず、学問として授業が行われる様になったのはほんの100年ほど前である。実は我々はまだセラミックスのほんの一部を知っているだけ、そして利用しているだけに過ぎないのだ。ということは、ある日突然まったく予期しないような特性を持つノーベル賞級のセラミックス材料が現れても何ら不思議ではない。いや、実際にセラミックスはこれまでそういった画期的な発見の繰り返しであった。そう、セラミックスは今でも宝の山なのだ。
本学無機材料分野の教員は構造科学、物性科学、反応科学、プロセス科学に対して多様な学問分野を担っている。セラミックスに留まらず、金属、有機、半導体、電気、磁気、光、情報、生命、医療、分析評価、設計...の研究をしている。従って無機材料分野で学ぶことは、材料に関する基礎学問を勉強するだけではなく、環境・エネルギー・エレクトロニクス・バイオテクノロジー・構造インフラといった応用に直接繋がる研究も経験できる。また、無機材料分野の教員は材料分野の世界一流の研究者と日頃から議論を重ね、関連する世界の学会をリードする研究成果を挙げている。そう、材料全般に渡る広い視野、豊かな創造性、国際性とともに、リーダーシップも身につくのである。
我々の任務は、材料分野での教育・研究を通じて、人類の将来を託せる人材を育成することにある。是非、ここで共に学び、研鑽を積んで行こう。そして日本、人類、地球の豊かな未来を共に切り開いて行こう。
8月から「研究室紹介」シリーズとして、金属、有機材料、無機材料から材料系の研究室をご紹介します。どうぞお楽しみに。