情報工学系 News
失語症の個人化脳刺激法開発に向けて
脳波を用いた個人化脳刺激法
東京科学大学(Science Tokyo)※ 情報理工学院 情報工学系の吉村奈津江教授と東京都立大学 人文科学研究科の橋本龍一郎教授、Ghoonuts株式会社 研究開発部の行田智哉氏らの研究チームは、言語機能に重要な脳の領域を(頭皮)脳波から個人ごとに特定し、電気刺激を行う個人化刺激法の有効性を示しました。
失語症の新たな治療法として、物体の呼称 [用語1] に関する脳領域(ブローカ野)に対する、頭皮からの微弱な電気刺激であるtDCS [用語2] の有効性が示唆されています。さらに近年では、脳の活動領域の個人差に対応するために、fMRI [用語3] を用いて、個人ごとに刺激領域をカスタマイズする方法が提案されています。この方法で、fMRIの代わりに脳波を使えば、臨床現場での汎用性が高まると期待されます。
そこで本研究では、脳波から脳皮質内の活動を機械学習で推定する信号源推定法 [用語4] を用いて個人ごとの活動領域を特定しました。その結果、脳波で推定された活動領域は、fMRIによる特定領域と高い精度で一致しました。さらに、脳波で特定した領域をtDCSで刺激することで、ブローカ野への刺激や偽刺激と比較して、呼称の反応速度が統計学的に有意に短縮することを確認しました。
本研究の結果から、脳波を用いた個人化刺激法の有効可能性が明らかになりました。本成果は、1月28日付(現地時間)の「Neuroimage」誌に掲載されました。
用語説明
[用語1] 呼称:提示された物の名称を答える機能。失語症で最も生じやすい障害の一つ。
[用語2] tDCS :経頭蓋直流電気刺激法。頭皮からの微弱な電気刺激により、神経細胞の興奮性および抑制性の調整を図る技術。
[用語3] fMRI :機能的磁気共鳴画像。血液中の酸素濃度の変化を測定して脳活動を可視化する技術。
[用語4] 信号源推定法:脳波で計測した電気信号について、機械学習を用いて脳内のどの部位で神経活動が発生しているかを特定する技術。
詳しくは、下記 Science Tokyo ニュースをご覧ください。