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人工細胞の分裂のタイミングや順序の制御による分子コンピューティングを実証

自己複製する人工細胞やRNA診断をする液滴コンピュータの実現に期待

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2024.10.07

融合DNA液滴が3種類の液滴に分裂する過程の模式図

融合DNA液滴が3種類の液滴に分裂する過程の模式図

東京科学大学* 情報理工学院 情報工学系および総合研究院 自律システム材料学研究センターの瀧ノ上正浩教授、生命理工学院 生命理工学系の丸山智也大学院生(博士後期課程3年)、公婧大学院生(研究当時)らの研究グループは、DNA液滴[用語1]を用いて作った人工細胞[用語2]の分裂のタイミングや順序の制御に成功し、がんのバイオマーカーとなるマイクロRNA(miRNA)[用語3]の濃度比較を行う分子コンピューティングへ応用した。

核酸(DNA、RNA) 、タンパク質、脂質などの生体分子を組み合わせて作られる人工細胞は、生細胞モデルや分子コンピュータなどを通じて、次世代の医療やコンピュータへの応用が期待されている。人工細胞の分裂のタイミングや順序が制御できると、自己複製などの複雑な細胞機能を構築することや、複雑な分子情報処理の手順をプログラムすることが可能になる。本研究で人工細胞の構築に用いたDNA液滴では、分子のセンシングをトリガーにした分裂などは確認されているが、分裂のタイミングや順序の制御はこれまで実現していなかった。


本研究では、RNAや酵素を用いた分子反応によって、DNA液滴の分裂現象に要する時間を制御する機構を開発し、DNA液滴の多段階分裂における分裂順序の制御に成功した。さらに、マイクロRNAの濃度によって分裂の順番が変わるようにプログラミングし、その濃度差を判断する分子コンピューティング機能を持つ人工細胞を構築した(図1)。

本研究で開発された技術は、よく制御された多段階の分裂を示す自己複製が可能な人工細胞や、生体内で特定の分子の検出を行う自律型分子ロボット[用語4]の開発に貢献すると考えられる。


本研究成果は、2024年8月27日(英国時間)に英国科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」で公開された。

*2024年10月1日に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合し、東京科学大学(Science Tokyo)となりました。

用語説明

[用語1] DNA液滴:Y字型やX字型などの分岐構造を持つDNAナノ構造が集まって作られるマイクロスケールの凝集体。DNA塩基配列の設計によって、安定性などの性質を制御したり、情報処理能力などを液滴に付与したりすることができる。

[用語2] 人工細胞:DNA、RNA、タンパク質、脂質などの生体分子によって構築される、細胞を模倣した小胞や微小液滴。

[用語3] マイクロRNA(miRNA):生細胞内に存在する18~25塩基程度の1本鎖RNA。がんなどの生命現象に関与していることが知られている。

[用語4] 分子ロボット:DNAやタンパク質などの生体分子によって構築され、分子センシング、分子コンピューティング、分子による運動や機械的動作が統合された、自律的な微小サイズのロボット。


詳しくは、下記 Science Tokyo ニュースをご覧ください。


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