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アミド-エステル置換により環状ペプチド膜透過性を大幅に向上

細胞内タンパク質に作用するペプチド創薬の研究を加速

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2023.03.23

東京大学大学院工学系研究科の山東信介教授、森本淳平講師、細野裕基大学院生(研究当時)、内田聡大学院生、新開萌大学院生、植木亮介助教(研究当時)のグループは、東京大学大学院薬学系研究科の竹内恒教授、上田卓見准教授らのグループ、同研究科の金光佳世子特任講師らのグループ、東京工業大学情報理工学院情報工学系の秋山泰教授、杉田昌岳特任助教(研究当時。現 研究員)らの研究グループ、University of California, Santa CruzのScott Lokey教授らの研究グループと共同で、環状ペプチドのアミド結合[用語1]エステル結合[用語2]に置換することによって受動的膜透過性[用語3]が飛躍的に向上することを明らかにしました。

近年、ペプチドを用いた創薬研究が活発に行われており、特に環状構造を有するペプチド(環状ペプチド)が、高いタンパク質阻害活性や生体安定性を示すことから注目され、薬剤候補として期待されています。環状ペプチドはアミノ酸がアミド結合により連結した構造からなりますが、天然に存在する膜透過性の高い環状ペプチドは、アミド結合の代わりにエステル結合を含んでいるものが多数存在します。本研究では、環状ペプチドの特定のアミド結合をエステル結合に置換(アミド-エステル置換)することによって、受動的膜透過性が大きく向上することが示されました。また、環状ペプチドが膜を透過するプロセスを分子シミュレーションと実験化学の両面から研究し、アミド-エステル置換によって環状ペプチドの受動的膜透過性が向上するメカニズムを明らかにしました。

本研究の成果により、細胞膜を受動的に透過する環状ペプチドの創出が加速し、がんや神経変性疾患などこれまで治療が困難だった疾患に対するペプチド創薬が発展すると期待されます。

用語説明

[用語1] アミド結合 : カルボン酸とアミンから脱水縮合反応によって生成する結合のこと。R1-C(=O)-NHR'などの一般式であらわされる。

[用語2] エステル結合 : カルボン酸とアルコールから脱水縮合反応によって生成する結合のこと。R1-C(=O)-OR'の一般式であらわされる。

[用語3] 受動的膜透過性 : 化合物がエネルギーなどを必要とせず細胞の膜を受動的に透過する性質。受動的膜透過性が高いと、経口投与可能な薬剤および細胞内タンパク質を標的とした薬剤が実現できる可能性が向上する。


詳しくは、下記東工大ニュースをご覧ください。

    
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