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大規模分子シミュレーションによる環状ペプチドの細胞膜透過性予測法を開発

スパコンを活用して中分子創薬を加速

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2021.08.11

東京工業大学 情報理工学院 情報工学系の秋山泰教授らは、環状ペプチド[用語1]細胞膜透過性[用語2]をスパコンの大規模活用による最新鋭の分子動力学シミュレーション[用語3]技術に基づいて計算する、新たな予測手法を開発した。

多様な標的に対して高い結合親和性を持つ環状ペプチドは創薬において注目されているが、適切な設計を見つける(予測する)ことが困難という課題があった。秋山教授らの研究グループは分子シミュレーションによるペプチド設計の予測手法を開発し、156個の環状ペプチドを対象とした検証実験を通じて評価した。その結果、提案手法による細胞膜透過性の予測値は実験値との良好な相関が見られ、十分に実用的な予測性能をもつことが実証された。さらにシミュレーションによる動態解析の結果、環状ペプチドを構成する原子と細胞膜や水との間の静電相互作用[用語4]が、細胞膜透過性と強く関係することが明らかになった。この知見は膜透過メカニズムの解明や膜透過性を有する分子を設計するための指針に繋がり、ペプチド創薬技術の確立に大きく貢献するものである。

研究成果は2021年7月8日(現地時間)付で米国化学会Journal of Chemical Information and Modeling(ケミカル・インフォメーション・アンド・モデリング)誌のオンライン速報版で公開され、掲載号のカバーピクチャーに採用された(下図参照)。



用語説明

[用語1] 環状ペプチド : 複数のアミノ酸が連なったポリペプチドの両末端が何らかの結合で結ばれて環状になった分子。

[用語2] 細胞膜透過性 : 細胞の内外を隔てる脂質二重膜に対し、ある物質がどの程度通過しやすいかを示す指標。通常、単位時間・単位面積あたりに膜を隔てて物質が移動した量を膜の内外の物質の濃度差で割った値で評価される。

[用語3] 分子動力学シミュレーション : ニュートンの運動方程式を短い時間間隔で逐次的に解くことにより原子や分子の運動を予測・再現する手法。

[用語4] 静電相互作用 : 各原子の電荷(電気量)に関する相互作用。分子間に働く相互作用の一種である。正電荷と負電荷があり、同符号の電荷の間には斥力、異符号の電荷の間には引力が働く。


詳しくは、下記東工大ニュースをご覧ください。


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