情報工学系 News
標的とするメインプロテアーゼのウイルス複製機能阻害に求められるファーマコフォアをモデル化
東京工業大学 情報理工学院 情報工学系の関嶋政和准教授を中心とする、同大学 物質・情報卓越教育院の安尾信明特任講師、筑波大学 医学医療系 生命医科学域の吉野龍ノ介助教の研究グループは、スーパーコンピュータTSUBAME3.0※を用いた分子動力学シミュレーションにより、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の複製に関わる酵素「メインプロテアーゼ」の機能を阻害する治療薬の候補となる化合物が満たすべき、ファーマコフォアのモデリングに成功した。またメインプロテアーゼを標的とする医薬品候補であるα-ケトアミド阻害剤[参考文献]を用いて、このファーマコフォアが正しいことを確認した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬探索では、既存の上市薬もしくは治験の一部を通過した薬をベースに薬剤候補を探索するドラッグリポジショニングという手法が取られており、安全性や開発期間の短縮が期待されている。本研究で明らかにしたファーマコフォアは、既存薬の探索だけでなく、新規の薬候補化合物の探索にも応用できる点で重要な成果だといえる。
今後は、このファーマコフォアに基づき、シミュレーションと統計的機械学習などの人工知能(AI)や生化学実験を組み合わせたスマート創薬によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬候補となる具体的な化合物探索を目指していく。
本研究成果は2020年7月27日に国際科学誌『Scientific Reports』に掲載された。
本研究の一部は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業 創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)の課題番号JP20am0101112の支援を受けました。
※スーパーコンピュータTSUBAME3.0: 東京工業大学学術国際情報センターが運用するスパコンで、2,160個のGPUを搭載し、12.15ペタフロップスのピーク演算性能を持つ。最先端の研究教育の基盤として、広く学内外に計算資源を提供している。また産業利用にも大きく貢献している。
参考文献 : Zhang et al., Crystal structure of SARS-CoV-2 main protease provides a basis for design of improved α-ketoamide inhibitors, Science 24 Apr 2020:Vol. 368, Issue 6489, pp. 409-412, DOI: 10.1126/science.abb3405
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