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粒子混雑効果による自発的なラチェット輸送に成功

外部操作を必要としない微小ロボット集団の制御に期待

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2020.06.03

東京工業大学 情報理工学院 情報工学系の瀧ノ上正浩准教授と早川雅之日本学術振興会特別研究員(現・理化学研究所)らは、定常的なラチェット型ポテンシャル[用語1]のもとで、粒子同士の相互作用によって自己組織的に粒子が輸送される集団輸送方法の開発に成功した。

瀧ノ上准教授らは輸送される粒子間の相互作用を利用し、時間変化させないラチェット型ポテンシャルのもとで自己推進力を持たないマイクロ粒子を集団的に輸送することを実現した。また、この現象が粒子密度に依存して起こることを解明した。

今後は、粒子集団の運動原理を解明するアクティブマター物理学やソフトマター物理学[用語2]における基礎研究やLab-on-a-chipデバイス[用語3]内などのマイクロメートルスケール環境における粒子操作技術などの応用研究への貢献が期待される。

従来は非対称形状のラチェット型ポテンシャルによって粒子を輸送するラチェット輸送[用語4]では、ポテンシャル[用語5]の時間変化または粒子の自己推進力のいずれかが、輸送方向の方向性を出すために必要だった。

研究成果は4月7日にドイツの科学誌「Advanced Intelligent Systems (アドバンスト・インテリジェント・システムズ)」のオンライン速報版で掲載された。

用語説明

[用語1] ラチェット型ポテンシャル : ラチェットとは爪車のこと。図1に示してあるような、極小点の左右で傾きが異なるノコギリ歯の形状を持つ周期ポテンシャル。

[用語2] アクティブマター物理学やソフトマター物理学 : アクティブマターはエネルギーを消費して運動を持続する物質・物体、およびそれらの集合体を対象とする物理学。ソフトマターは高分子や液晶、コロイド、両親媒性分子などの物質系を対象とする物理学。

[用語3] Lab-on-a-chipデバイス : チップ上に、フォトリソグラフィなどの微細加工技術を用いて作られた、反応・検出などを行う素子を統合したデバイス。サンプル消費量の少ない点や高い比表面積による反応時間の高速化などのメリットがあり、近年、顕著に発展している。

[用語4] ラチェット輸送 : ラチェット型ポテンシャルを利用し、Lab-on-a-chipデバイス内などの微小環境において、粒子などのサンプルを目的の場所に移動させること。

[用語5] ポテンシャル : 電気的なエネルギーなどの高低を表す指標。ポテンシャルが低い方が安定なので、一般に、物体などはポテンシャルが低い方へ動いていく。

    

詳しくは、下記東工大ニュースをご覧ください。

    
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