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体温レベルの温度でDNAの高速増幅に成功

分子ロボットから核酸検査まで、どこでも使える増幅法

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2019.06.20

L-TEAM反応のイメージ

L-TEAM反応のイメージ

東京工業大学 情報理工学院 情報工学系の小宮健助教、山村雅幸教授らの研究チームは、新しい等温増幅反応「L-TEAM反応」を開発し、人の体温の37 ℃という低温でDNA[用語1]を100万倍まで高速に増幅することに成功した。既存のDNA増幅法であるPCR反応[用語2]が鋳型にプライマー[用語3]を投入するのとは逆に、プライマーに鋳型を投入することで、マイクロRNA[用語4]のような短い核酸に対しても直接DNAを増幅することができる。
また、多くの等温増幅反応で実用化の妨げとなっている、増幅対象の核酸が存在しなくてもDNAが非特異的に増幅される問題を、これまで知られていなかった人工核酸による抑制効果を見出して解決し、汎用的な検出性能を実証した。
未来の情報通信技術(ICT)や分子ロボットの基盤技術として期待されるほか、病気のマーカーとなる核酸を検出して、がんなどの早期診断を実現する技術として、健康長寿社会への貢献が期待される。
研究成果は英国王立化学会刊行「Organic & Biomolecular Chemistry(オーガニック&バイオモレキュラー・ケミストリー)誌」オンライン版で先行公開され、6月21日(金)に発行される23号の表紙(The outside front cover)に掲載される。

【用語説明】
[用語1] DNA、RNA : DNAは生物の細胞内で遺伝情報を保持するDeoxyribonucleic Acid(デオキシリボ核酸)の略。RNAは糖部分がリボースのRibonucleic Acid(リボ核酸)の略。
[用語2] PCR反応 : Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略。核酸中の増幅したい配列をはさむように設計した短いDNAを投入し、1.加熱による二本鎖DNAの解離、2.短いDNAがプライマーとして結合、3.増幅したい配列を鋳型としたDNAポリメラーゼ(合成酵素)によるDNA合成―の三つの反応ステップを、高温サイクルを繰り返すことで実行してDNAを指数的に増幅する。
[用語3] 鋳型、プライマー : DNA合成酵素によるDNA合成では、合成する配列を指定する鋳型となる核酸上で、塩基の対合規則にしたがって1塩基ずつDNAが伸長合成される。通常は15~25塩基程度の長さの核酸が、伸長を開始するプライマーとして鋳型に結合することでDNA合成が始まる。
[用語4] マイクロRNA : 20個前後の少数の塩基から成るRNA。

【論文情報】
掲載誌 : Organic & Biomolecular Chemistry(英国王立化学会刊行の有機化学および生体分子化学専門誌)
論文タイトル : Leak-free million-fold DNA amplification with locked nucleic acid and targeted hybridization in one pot(一つの反応容器中で行うLNAを利用した漏れの起きない100万倍DNA増幅と目標分子へのハイブリダイゼーション)
著者 : 小宮健(1)、小森誠(2)、野田千鶴(1)、小林聡(3)、吉村徹(2)、山村雅幸(1)
所属 : (1)東京工業大学 情報理工学院 (2)アボットジャパン株式会社 総合研究所 (3)電気通信大学 大学院情報理工学研究科
DOI : 10.1039/c9ob00521h

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