情報工学系 News
日本は世界有数の火山国であり、世界の活火山の約7%が存在します。火山の噴火は時として甚大な人的・物的被害を及ぼすものであり、2014年の御嶽山での火山災害は記憶に新しいところです。火山の活動状況を正確に把握して必要な対応を取ることは、専門家のみならず周辺地域の多くの人々にとっての重大な関心事です。
一般に、爆発的噴火の直前や直後において、火山から観測されるデータが特有の変動を示すことが知られています。観測データの多くは、時間とともに数値が変化する時系列データであり、これを分析することによって、火山の活動状況の把握につながることが期待できます。火山から観測される時系列データとしては、地面の歪みや、地震の振幅やエネルギーなどがあり、それぞれ伸縮計や地震計によって測定されます。
情報工学系知能情報コース修士2年のHiep Le君は、機械学習の手法である深層学習を用いて、火山活動分析を行う手法を考案しました。日本における有数の活火山である鹿児島県の桜島周辺に設置された装置から観測される時系列データに対し、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いることで特徴抽出を行い、爆発的な噴火が起こるか否かの分類を行いました。8年間の観測データを用いた実験の結果、従来手法よりも高精度の分類を実現しました。異なる装置から測定される複数の時系列データを用いることによって、個々の時系列データからよりも良い結果が得られました。また100分間の時系列データ中での爆発的な噴火が起こるタイミングを、8割から9割の精度で見分けることができるようになりました。
この研究に関する記事が、2018年1月15日の日本経済新聞9面に掲載されました。この研究は、Hiep Le君と、情報工学系知能情報コースの村田剛志准教授と、京都大学防災研究所の井口正人教授との共同研究です。火山データは国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所から提供いただきました。今後は、与えられた時系列データから将来の爆発的な噴火が起こるか否かを予測する手法の研究を行い、将来的には防災に生かせる人工知能技術を目指していきます。