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ペプチドリーム株式会社(以下「PD社」)と東工大との間で、スーパーコンピュータTSUBAME 2.5を利用した特殊ペプチド創薬向けインシリコ※技術の開発に関する共同研究契約を締結しました。
PD社は、以前より、多くの製薬企業との共同研究開発や自社研究開発において取得・保有している特殊環状ペプチドに関して、薬理活性のみならず薬物の体内動態に関わる化合物の種々のプロファイル(溶解度、膜透過性、血中安定性、血漿タンパク結合能、代謝安定性、酸に対する安定性等々)と特殊環状ペプチドの2次元・3次元構造との間の相関について、統計的・包括的な理解に努めてきました。
本共同研究では、PD社が保有・取得する特殊環状ペプチドの大量の実験データを基盤として、東工大が保有するスーパーコンピュータ及び計算科学、機械学習・人工知能技術を活用したインシリコ予測技術を確立することを目指しています。対象となるのは、特殊環状ペプチドの細胞膜透過性及び血漿タンパク結合能の計算機による高性能予測です。
これらを確立することにより、PD社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)から得られるヒットペプチドの最適化をさらに効率的にし、医薬品候補化合物の取得を加速できるものと考えています。
東工大では秋山泰教授(情報理工学院教授、科学技術創成研究院スマート創薬研究ユニットメンバー)を中心とした研究グループが、スーパーコンピュータを利用したペプチド分子の分子シミュレーションや、機械学習を応用した分子特性の計算機予測技術を保有しており、今回の共同研究を担当します。
過去6年間に、PD社は多くの世界的製薬企業(米アムジェン(AMGEN)社、英アストラゼネカ(AstraZeneca)社、米ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol-Myers-Squibb)社、米ジェネンテック(Genentech)社、英グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)社、仏イプセン(IPSEN)社、米リリー(Lilly)社、米メルク(Merck)社、スイスノバルティス(NOVARTIS)社、仏サノフィ(Sanofi)社、旭化成ファーマ株式会社、杏林製薬株式会社、塩野義製薬株式会社、第一三共株式会社、田辺三菱製薬株式会社、帝人ファーマ株式会社)との間で創薬研究開発契約を結び、戦略的共同研究開発を行ってきました。さらに、米ブリストル・マイヤーズ スクイブ社、スイスノバルティス社及び米リリー社に対しては、PD社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS の非独占的なライセンス許諾(技術ライセンス契約)を実施しています。
「スーパーコンピュータを駆使した高性能計算や人工知能の分野で世界を牽引する東工大との共同研究を始められることに大変興奮しております。当社が有する特殊環状ペプチドに関するあらゆる実験データ・知見を基盤に、東工大が有するペプチド分子の分子シミュレーションや、機械学習を応用した分子特性の計算機予測技術を駆使することで、これまでに明らかになっていなかったペプチドの構造とプロファイルの相関を見出せるのではないかと考えています。」
ペプチドリーム株式会社は、「日本発、世界初の新薬を創出し社会に貢献したい」という現社長の窪田規一氏と現社外取締役の菅裕明氏(東京大学大学院教授)の共通の夢から、2006年7月に設立されました。独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を用いて、極めて広範囲にわたる特殊ペプチドを多数(数兆種類)合成し、高速な評価を可能にすることで、創薬において重要なヒット化合物の創生、リード化合物の選択、もしくはファーマコフォアの理解を極めて簡便に、かつ、効率的に行えるようにしました。ぺプチドリーム株式会社は、特殊ペプチドを用いた創薬企業の世界的なリーダーとして世界中の病気で苦しんでいる人々に画期的新薬を提供することを使命として、研究開発に取り組んでおります。
研究で頻繁に見られる表現、in vivo(生体内で)やin vitro(ガラス、すなわち試験管内で)などに準じて作られた用語で、文字どおりには「シリコン内で」の意味。実際には「コンピュータを用いて」を意味する。実験や測定に関連するシミュレーション計算など、実際に対象物を取り扱わず計算で結果を予測する手法を指して インシリコ(in silico)と呼ぶ。
お問い合わせ先
ペプチドリーム株式会社
Tel : 03-3485-7707
東京工業大学 広報センター
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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661