融合理工学系 News
東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所の髙須 大輝准教授(地球環境共創コース 主担当)が令和5年度の東工大挑戦的研究賞を受賞しました。
授賞式は2023年8月31日に開催される予定です。
挑戦的研究賞は、東工大の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏の分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開又は解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するとともに、研究費の支援を行うものです。本賞を受賞した研究者からは、数多くの文部科学大臣表彰受賞者が生まれています。
第22回となる今回は高須 大輝准教授を含む10名が受賞しました。
令和5年度東工大挑戦的研究賞の受賞者は、こちら をご覧ください。
固体酸化物セルはこれまで効率的に電気エネルギーを取り出す燃料電池用途として一部で利用されてきましたが、近年では電気エネルギーを投入して物質の変換を行う電気分解セルとしての利用への期待も高まりつつあります。これにより、再生可能エネルギー等の低炭素エネルギーを利用した効率的な水素製造や、産業利用される化石資源の代替材料製造等が可能となります。加えて、エネルギー需給に合わせてこれらの運転モードを切り替えて利用するリバーシブル運転も原理的に可能であり、これにより固体酸化物セルの稼働率を高めることが期待できます。燃料電池むけの固体酸化物セルはこれまでも研究開発が行われてきました。しかし、既存セルはオールセラミックス製であり、その機械的性質やコストの観点から実産業が求める大規模な発電、電気分解への利用には未だ課題が残ります。
これら課題の克服のため、本研究では金属を支持体として用いる次世代型金属支持rSOC (MS-rSOC)の開発を進めています。金属を支持体として用いることで、固体酸化物セルの大面積化や低コスト化等の様々なメリットが期待できます。一方で、従来技術の直接適用が難しいため、金属支持セルのセル構成やその製造手法、大型化に至るまで個別に検討が必要となります。本研究では金属細線メッシュを支持体として用いる独自セル構造を有するMS-rSOCを提案し、セル層の形成にはセラミックス溶射技術を統合したセル製造法の適用検討を行っています。実際に、直径2cm程度のコインセルを用いた基礎性能試験に加え、最大で一辺10cm程度の四角形大面積MS-rSOC開発にも着手しています。次世代型セル開発として様々な開発課題はありますが、研究室一丸となりながら実産業界での実用化を見据えたMS-rSOC開発に挑戦しています。
この度は、輝かしい賞を頂戴し誠に光栄に思います。本受賞は共に研究開発に携わって下さった多くの研究者や学生さんらの協力無しには成しえなかったものです。心より感謝申し上げます。