イベント・セミナー・講演会
ソフトマテリアルのナノ粒子(ミセルやベシクル)は、近年ドラッグデリバリーや生体親和性材料およびバイオ診断といった応用に向けて盛んに研究されている。これらの粒子は溶液中でのみナノスケールの構造体として存在し、その機能を発現するため、真空下の電子顕微鏡測定などではなく溶液中において粒径を決定することが重要である。この目的のために最も広く用いられている動的光散乱法では、溶液試料にレーザー光を照射し、その散乱光の強度のゆらぎを計測する。市販の動的光散乱装置では数nm~数百nmの粒径分布の推定が可能であるが、市販装置には以下のような問題点がある。
① 白濁している試料を測定することができない。
② ホコリなどの汚染物質の影響を強く受ける。
③ 牛乳や生細胞など多くの化学種が含まれる対象について、化学種ごとの粒径分布を識別できない。
これらの問題を克服するために、当研究室では新たな動的光散乱装置の開発を行ない、これまで困難であった白濁した系や汚染物質を含む系、および多成分系溶液中での粒径分布計測に成功した。本講演では、動的光散乱法の測定原理を説明した上で、当研究室で開発した様々な動的光散乱装置および今後の研究展望について紹介する。
更新日:2025.11.25