イベント・セミナー・講演会
自己駆動する個体の集団はアクティブマターと呼ばれ,近年集中的に研究されている非平衡系である.特に,構成要素が二次元平面上での円運動のように,鏡映対称性を破った運動を行う系はカイラルアクティブマターと呼ばれている.運動のカイラリティは,通常のアクティブマターにはない様々な性質をもたらすことが知られている.本セミナーでは,カイラリティに起因する異常な密度揺らぎと,二次元結晶化について議論する.二次元カイラルアクティブマターの流体的な状態では,粒子配置は無秩序なのにも関わらず密度揺らぎが異常に抑制されるhyperuniformityと呼ばれる現象が実験的,数値的に確認されている.まず,このhyperuniformityに関する導入を行い,その理論的な導出を紹介する.次に,二次元カイラルアクティブマターの流体相から固体相への転移を議論する.固体相では,hyperuniformityと同様の揺らぎの抑制効果が変異場にも働き,結晶秩序が安定化され,二次元であっても長距離並進秩序が出現することを数値的,理論的に示す.この結果は,平衡系では長距離並進秩序を伴う二次元結晶化が禁止されている事実と対照的である.
更新日:2025.03.10